小椋藍選手がMoto2チャンピオン獲得!!「3度目の正直」に必要だったものとは【MotoGP第18戦タイGP】
そんな決勝は、やはりいつもの小椋選手のレースでした。5位にさえ入ればチャンピオンは決まります。しかし、もちろん守りの走りをすることはありませんでした。序盤は路面状況もあって様子を見ていましたが、状況を把握すると、6周目以降に猛然とポジションを回復し始め、14周目に2番手に浮上したのです。 ところが、トップのカネト選手を追っていたところでまたしても雨が降り始めます。ペースを落としたところで、21周目に天候を理由に赤旗が提示され、全周回数の3分の2を完了していたことから、レースは2周を残して終了となりました。 この瞬間、小椋選手の2024年シーズンMoto2チャンピオンが決定しました。日本人ライダーとしては、2009年250ccクラスの青山博一さん(現ホンダ・チームアジア監督)以来、15年ぶりのチャンピオン誕生となったのです。 「もちろん、チェッカーを受けたかったですよ。でも、こういうコンディションなので仕方ないですね。チェッカーを受けた方が実感が湧くと思うんですけど、レッドフラッグは急だったから、心の準備ができていなかったです」 小椋選手は、チャンピオンを獲得した直後の心情について、そう語っていました。
小椋選手がパルクフェルメと表彰台で見せた表情
クールダウンラップでのセレブレーションを終えてパルクフェルメにやって来た小椋選手は、メカニックやチームスタッフたちに迎えられました。たくさんのハグ。インタビュー。カメラに向かってポーズ。パルクフェルメは新しいチャンピオン誕生の歓喜に満ちています。 その合間、合間に、小椋選手は何かをかみしめる表情をしていました。じんわりと湧き出てくる何かを少しずつ、けれど逃すことなくしっかりと感じ取るように。 ついにパルクフェルメでは涙を見せなかったのですが、表彰式のあと、現地に駆け付けたお父さんから手渡されたスマートフォンでお母さんとビデオ通話をしたときばかりは、こみ上げるものがあったそうです。 「簡単なお祝いの言葉をもらいました。そのときは、けっこう……」 ビデオ通話をしていたとき、小椋選手は表彰台で背を向けて、目頭を押さえていました。それは、彼がひとりの小椋藍に戻った時間だったのかもしれません。 けれどその後、こちらにくるりと向き直ったときには、いつもの様子でした。小椋藍は、どこまでも「小椋藍」なのです。