柳葉敏郎、矛盾した気持ちを認めて前進「室井慎次がいなくなることはない」【インタビュー】
――久しぶりに室井慎次を演じていかがでしたか? 【柳葉】室井はいつも何かに悩んでいるキャラクターです。被害者家族・加害者家族の子どもたちの里親になっても悩んでいたと思います。僕も子育てを楽しみながらも、悩むことが多かった。自分自身が悩む姿を見せることが、皆さんに一番伝わるんじゃないかと思って演じていました。それにしても、空き家をリフォームしたり、キャラ弁に挑戦したり、室井って器用なんだなと思いました(笑)。 ――青島とは異なる新城との因縁も熱いですよね。 【柳葉】室井は熱意ある青島(演:織田裕二)と出会い、一緒に働くことによって、変わっていきます。青島は室井にとって全てが新鮮な存在でした。そんな室井のふるまいに影響されたのが新城です。室井の後を継ぐ存在に徹してくれたと感じています。新城を演じる筧利夫くんも素晴らしい役者です。今回、新城との最後のシーンでは、新城/筧くんへの感謝の気持ちがあふれて涙が止まりませんでした。 ――『室井慎次 敗れざる者』を見た感想は? 【柳葉】初号試写を見終わって、意味がわからない涙が出てきたんです。室井の悔しさが一瞬、私の中を通り抜けていって、涙となってあふれ出てきたんです。あの瞬間は、今でも強く記憶に残っています。 ――悩みや葛藤を経て、室井慎次を再び演じて改めて思うことは? 【柳葉】室井を払拭したいなんて言ってしまいましたが、やはり室井というキャラクターほど、多くのことを教えてくれた役はほかにない。ここまで強いイメージが定着した役は、後にも先にも室井慎次だけです。だから、柳葉の中から室井がいなくなることはないと思います。それを受け入れて、今後もさまざまな役に挑戦しながら、視聴者をいい意味で裏切るような仕事をしていきたいですね。 ■『室井慎次 敗れざる者』『室井慎次 生き続ける者』 現場の捜査員のために粉骨し、警察の組織改革に挑むなど、波乱に満ちた警察人生を歩んできた室井慎次(演:柳葉敏郎)。27年前の“青島との約束”を果たせなかったことを悔やみ、警察を辞めて故郷・秋田に帰った。「事件の被害者家族・加害者家族を支援したい」という想いで、少年たちと一緒に穏やかに暮らすも、ある日、家の傍で他殺と思われる死体が発見される。そんな中、かつて湾岸署を占拠した猟奇殺人犯・日向真奈美(演:小泉今日子)の娘だという少女・杏(演:福本莉子)が現れ、穏やかな暮らしを求めたはずの室井の日常が徐々に変化していく。