昭和の食卓では嫌われた「ふりかけ」が過去最高の売り上げに 節約志向で大人の「夜ごはん」でも重宝
■昭和の親世代が持つ「ふりかけの罪悪感」 「高度成長期、日本のお母さんたちは“良妻賢母”のイメージから、食卓にふりかけを使うことに罪悪感を覚えていました。当時は、自分が楽しくふりかけを食べた記憶を持つお母さんが少なく、子どもに『おかずがあるのだから、ふりかけではなくおかずでご飯を食べなさい』と注意することが珍しくなかったのです。ところが、ふりかけをおいしく食べた記憶を持つ団塊ジュニアが親世代になった2000年代前半から、親子でふりかけを味わう光景が当たり前になりました」 この“ふりかけの罪悪感”については少し補足が必要だろう。食文化研究家で『ふりかけ 日本の食と思想』(学陽書房)の著作がある熊谷真菜氏が解説する。 「ふりかけの源流の1つに、おかずをご飯にかけた“ぶっかけ飯”があります。煮物や汁物といったおかずをご飯にかけて食べる。そのおかずの部分に洗練を重ねたのがふりかけの歴史なのですが、原点の“ぶっかけ飯”は庶民が編み出した食べ方です。当時は重んじられた白米なので、ふりかけで白を汚すのを嫌う人もいました。一方でお寺の精進料理や料亭の松花堂弁当では昔からご飯の上にゴマ塩やシソのふりかけが乗っていました。真っ白なご飯とふりかけの上品な彩りをめでる食文化も同じように根強いものがあったのです」 昭和までは、この“上品派”と“下品派”のせめぎ合いが続いていたが、今では下品派が完全に姿を消してしまった。これもふりかけ人気に影響を与えたと言えそうだ。 熊谷氏はこう続ける。 「興味深い動きの一つとして、80年代後半から混ぜ込むタイプのふりかけが登場したことが挙げられます。これにより、ふりかけはまぜご飯や炊き込みご飯の代わりも務められるようになりました。ワカメなど体にいい食材も使われるようになり、ふりかけが健康食品として見直されるようになったのです。またもう一つは、外国でのふりかけ人気です。外国人観光客で日本のふりかけをお土産に買う人が増えています。海外で地元で人気の高級レストランに行くと、FURIKAKEがトッピングされた刺し身など日本人には思いも寄らない斬新な一皿が出てきます。日本人と同じように“風味”を楽しむ外国人が増えたことで、ふりかけが世界で売れるようになっています。これも市場の拡大に寄与していると思います」