荒木飛呂彦が惜しみなく明かす「悪役の作り方」とは?「身辺調査」までする徹底っぷりに「ジョジョ」悪役の魅力も納得(レビュー)
漫画家荒木飛呂彦のファンは、本誌読者にも多いことだろう。代表作『ジョジョの奇妙な冒険』は連載開始から40年近くを経た今も絶大な人気を保ち、影響を受けた漫画家や作家は数知れない。海外での評価も高く、今や漫画界の枠を超えて、日本を代表するアーティストの一人といってよいだろう。 荒木作品の人気を支えるのは、登場するキャラクターたちの際立った個性だ。特に悪役たちは、時に主人公さえも食うほどの妖しい魅力を放ち、忘れがたい印象を残す。このほど著された『荒木飛呂彦の新・漫画術 悪役の作り方』では、この悪役キャラクターたちに魂を吹き込むノウハウが、著者本人によって惜しみなく解説されている。 荒木氏は、主要キャラクターそれぞれに「身上調査書」を作成し、身長体重などの身体的特徴はもちろん、生い立ちや家族構成、習慣や口ぐせまでを細かく決めるのだという。映画などはもちろん、冠婚葬祭の場などでもモデルとなりそうな人物を探すというから、なるほどあの奇妙で魅力的なキャラクターはこうやって生まれるのかと納得させられる。 過去に登場した悪役たちを例にとった解説はファンならたまらない内容だが、それ以外にも何らかの創作活動に関わる人であれば、参考になることが必ず見つけられるだろう。評者はこれまで小説など書いたことがないが、新たな人物と世界を創り出す悦びを味わってみたい気にさせられた。 [レビュアー]佐藤健太郎(サイエンスライター) 1970年、兵庫県生まれ。東京工業大学大学院理工学研究科修士課程修了。医薬品メーカーの研究職、東京大学大学院理学系研究科広報担当特任助教等を経て、現在はサイエンスライター。2010年、『医薬品クライシス』で科学ジャーナリスト賞。2011年、化学コミュニケーション賞。著書に『炭素文明論』『「ゼロリスク社会」の罠』『世界史を変えた薬』など。 協力:新潮社 新潮社 週刊新潮 Book Bang編集部 新潮社
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