来季はJ1最大20チーム?!なぜJリーグは昇格あり降格なしの新方式を決断したのか
いずれのケースも、リーグ戦を成立させるための条件である、競技の公正性や公平性を損なうおそれがあるとJリーグ側は考えている。例えば【3】でユースの選手を多く起用すれば戦力ダウンは免れないし、あるいは【4】の無観客試合ではファン・サポーターの応援の後押しを受けられない分だけパフォーマンスが落ちるかもしれない。全体で合わせた目線の高さを村井チェアマンが説明する。 「ひとつずつの事例を公平だ、不公平だとあげていくのは、この非常事態のもとではきりがない。そういう判断がありうるなかで、Jリーグとしてどのような困難があっても、不公正があっても、不公平があっても、ある意味でそれらをクラブ全体で飲み込んでスポーツに向かっていこう、となりました」 公式戦の再開へ向けて、Jリーグは4つのプロジェクトチームをフル稼働させている。そのうち大会日程、そして競技の公正・公平性を担当する2チームの合同で、降格リスクをあらかじめ排除する案が臨時実行委員会で答申された。承認に至るまでの経緯を原博実副理事長(61)が補足する。 「簡単な決断ではなかったことは、各クラブの方々と話していても感じました。ただ、どうしてでもリーグ戦を成り立たせ、Jクラブを維持させていくためには、少々不公平があっても試合をしていくというモチベーションを作りたかった。それを考えたときに、今シーズンに限っては降格という要件をなくそう、ということをみなさんに理解してもらいました」 リーグ戦が公正・公平のもとで行われないことを想定すれば、降格だけでなく昇格も凍結させるべきではないか、という意見もあった。後者を継続させた理由を、村井チェアマンはこう説明する。 「我々としては目標に向かって選手たちが頑張っていく姿を推奨したいし、結果を残した選手たちに対しては報いていきたい。だからこそ、こういう状況のなかでも頑張った象徴となる昇格は残し、ある意味で競技結果に対する大きな罰則ともとらえられる降格は、今回は保留しようとなりました」 今後は日本野球機構(NPB)との共同で設立した「新型コロナウイルス対策連絡会議」の第4回会議を23日に開催。東北医科薬科大学の賀来満夫特任教授(感染制御学)を座長とする、専門家チームの助言も判断材料に加えながら、25日に再び開催する臨時実行委員会で4月3日に公式戦を再開できるかどうかの可否をくだす。村井チェアマンが続ける。 「4月3日の再開であればすべての試合ができるわけだから、降格や昇格も通常通りに、という考え方もぎりぎりまで留保していた方がいいのでは、という意見もありました。ただ、日々状況が変わっていくなかで、本当ににっちもさっちもいかなくなったときに降格なしという考えを出すのではなく、あらかじめ決めておいた上で再開に備えた方がいいと、最後は総意で決まった次第です」 試案ではリーグ戦全体を成立させるための消化試合数のパーセンテージが75%以上、例えば1クラブあたり年間34試合を戦うJ1ならば26試合以上と弾き出されている。その問題やJ1昇格プレーオフの取り扱い、そして2021シーズン以降の昇降格などの付帯細則も同時進行で急ピッチで詰めていく。 前例のない緊急事態に直面しているからこそ、常識にとらわれない発想が必要になる。先頭に立つ村井チェアマンの強いリーダーシップのもとで、サッカー界が一丸となって難局を乗り越えていく。 (文責・藤江直人/スポーツライター)