シェアタグで社会貢献を 新鋭アパレル企業が提唱
目標は東京五輪開催時までに1億枚
急成長中とはいえ、息の抜けない経営判断に追われながらも、創業記念プロジェクトの視野を業界全体まで広げたのはなぜか。山野社長が思いを明かす。 「いまのアパレル業界には閉塞(へいそく)感が漂う。かつてはもっと楽しく個性的で元気だった。シェアタグに共同で取り組むことで業界全体を盛り上げたい。アパレルの本業でも社会貢献できる。誇りと元気を取り戻してほしい」 シェアタグ方式の来春導入後、20年夏の東京五輪開催時までに、シェアタグの付いた商品総数で1億枚達成を目指す。目標の1億枚には、メッセージを全国民へ届けたいとの願いを託す。 「日本ではSDGsへの取り組みは遅れている。五輪開催までにシェアタグを浸透させ、訪日外国人に日本のアパレル業界が社会貢献に取り組んでいることを知ってもらい、シェアタグが世界標準になって広がればうれしい」(山野社長) 同社の衣料販売点数は年間400万枚。当面の目標1億枚達成には、同じ規模の企業なら25社との連携が必要だ。一ベンチャー企業の提案がどこまで理解を得られるだろうか。 「提携先は当社が手掛けるレディスだけに限定しない。すべての国民、老若男女に着て参加してもらえるよう、メンズやキッズを含めて、幅広い分野の企業に呼びかけていく」(山野社長)
華やかなダンスパフォーマンスでアピール
気鋭のアパレルらしく、記念式典では独自のダンス・ファッションショーでプロジェクトをアピール。7色の衣装を色別に着こなしたダンサーたちが登場し、激しいダンスパフォーマンスを経てすべての色が重なり合う。SDGsのテーマや世界の多様性、共生の重要性などを、五感に訴える手法で、プロジェクトへの参加を呼びかけた。 アパレル企業にとって、商品タグは地味ながら、存在意義を埋め込んだ聖なるシンボル。デザインから製造、販売に至る従業員全員の努力の総和であり、結晶だ。プロジェクトが軌道に乗れば、小さなシェアタグが業界を動かし、社会に大きなうねりを生み出す。 同社は併せて兵庫県尼崎市に大型物流センターを開設。近い将来、同業メーカーや小売店との共同利用へ転換し、物流の効率化を図る。共同配送で地球環境問題にアプローチする「シェアロジ」だ。 シェアタグ、シェアロジ。アパレル会社にブレイクスルーをもたらすのは、卓越したデザイン思想や画期的な販売戦略ばかりではない。連携による社会変革もトライ可能なテーマになってきたようだ。 (文責・岡村雅之/関西ライター名鑑)