【全文】BBC日本語版開設(下)「ニュースの信頼性の源泉は組織か個人か」
なぜニュースなのか「見識」をコンテンツに込める(藤村)
加藤:ご質問をいただかなくては。今は、ずっとお話に出てきた個人の信頼、組織としての信頼、そして組織として生き延びるために、ジムが話したように、アドブロックするような読者は要らないと脅すようなことが組織としての生き残り方なのかどうか、そういうのって全部、私が今伺っていて思ったのは、組織としての見識の問題につながっていくのかなと思ってフリップを見ていたんですけども、どういうご主旨でのキーワードですか。 藤村:基本は田端さんもおっしゃられていること、あるいは加藤さんがおっしゃられたこと、みんな一緒だと僕は思っていて。結局、アンバンドルの時代って、全体のパッケージによって何かを指し示すことが難しいので、1つ1つの記事で、なぜこの記事を読んでもらいたいと思っているのか。なぜこの記事が事件、ニュースであるのかということを伝えるのはとても難しい時代に入ってきてるんですね。 ところがやはりきちっと取材し、これがイシューであると。大変に大きな、未来にわたって大きなテーマになるであろうということを込めて記事を、コンテンツを作るという背景には、たぶんそのコンテンツを生み出す、あるいはご質問のように、メディアが今後担わなければいけない非常な重要なテーマとして、なぜこのニュースなのかという見識をちゃんと伝えていく必要があると思ってるんですね。 たぶんそれって、先ほどからお話があるような、おすし屋さんで言えば、黙って食えば分かる、みたいなところだけで通じなくなってきていると思っているので、なんらか見識というものをコンテンツに含める、もしくはコンテンツの周囲に伝える仕組みを考えていかなければいけないと、私は思っています。編成とか編集というところにとても重要なそういう意義を示す領域が残されていると思っていて、ここにまだまだメディアはやるべき仕事が残っていると思います。 SmartNewsのように、そういう見識を、ゼロからスタートしているわれわれからすると、見識っていうものがいきなりメディアの中核に宿っているわけではないので、それを組み上げていく必要があって、見識をつくるプロセスに入っています。そこの中核はアルゴリズムになると思います。集合知を生かしながら。でもなんかこれはテクノロジーをすごくうまく使って、頂を目指していく行為においては、人が素晴らしいコンテンツを作り出す、その見識を高めていくっていうのと、アルゴリズムによって素晴らしいコンテンツを生み出し、もしくは選択して人に届けていく行為っていうのがほとんど共通の、山を登る行為としては共通かなと思っているので、これからのメディアは同様にこういう課題を持つのかなと思ってます。