ル・コルビュジエ設計「美しい街」住民たちの苦難 エリートも住まう「緑豊かな都市」の見えざる敵
その庭園都市と呼ばれる存在は、近代的な工場と窮屈な間に合わせの住宅が持つ醜悪さとみなされていたものに対抗すべく、より多くの緑地─―従って、より多くの植物─―を内包することとなる。 チャンディガールでは、エリートの支配階級が豊かな緑に囲まれた家々に住むようになった。街中の大小の通り沿いにも木々が植えられていく。人工的な丘が設計された。それらがもたらした総合的効果が「より緑の多い」都市だった。 この計画によりチャンディガールは美しい街となった。ただし、花粉がひどく飛ぶ時期のある美しい街だ。
多くの他の都市とは違い、チャンディガールでは現時点で毎日の花粉の飛散量測定が行われていないことをシンは嘆く。花粉の情報は切実に求められているのだと彼女は主張する。花粉の飛散量の追跡調査が行われれば、彼女はもしかすると呼吸器アレルギーと喘息の患者により良い治療を行えるかもしれない。 ■空気の質を悪化させる工業化以外の要因 インドの喘息患者の苦難に寄与しているのはディーゼルエンジンと工場の排気だけではない。インドの多くの地域の局所的な空気品質にまつわるもう1つの問題は農地での野焼きではないかと、シンは話す。
「人々が、農作物を刈る時にすることはですね、(中略)後に残ったものは何でも(中略)燃やしてしまうのです。その結果、空気の質を悪化させる煙をたっぷり発生させることになります。こうした状況の中で環境に手を加える方法を、私たちは学ばなければなりません」。 だがシンは、喘息の有病率増加を抑えるために、インド人は自分たちの生活様式の選択を考え直さなければならなくなるだろうとも指摘する。 「それはおそらく、自動車の使用を制限することや、在宅勤務をしたりすることについての教育から始まるでしょう」。
ある意味で、新型コロナウイルス感染症のパンデミックはシンの担当するアレルギーおよび喘息の患者たちにとって有益だった。なぜなら、このパンデミックはインドの空気品質にとって有益なものだったからだ。インドの大気は一時的に少し綺麗になった。粒子状物質が減ったのだ。 このことと、パンデミックの間じゅうずっとマスクを着けていたことがおそらく相まって、シンの患者たちは普段よりも喘息の発作を起こさなかった。彼女の担当する呼吸器アレルギーの患者たちも、2020年の4月から5月にかけての花粉の多い時期を普段より楽にやり過ごすことができた。