「トランプ関税」は重要分野に限定か 米報道、トランプ氏は否定
米紙ワシントン・ポストは6日、トランプ次期米政権が関税一律引き上げの対象品目を、国家安全保障などに影響する重要分野に限定する計画を検討していると報じた。あらゆる品目を対象にすれば物価上昇(インフレ)を再燃させる恐れがあるため。選挙公約の大幅変更となるため、トランプ氏は「フェイク(虚偽)ニュースだ」と否定したが、次期政権内で関税引き上げに関する議論が難航している可能性がある。 報道によると、計画は全ての国に対し一律10~20%の関税を課すという公約を維持しつつ、インフレを起こさないよう対象品目を限定する内容。防衛産業に影響する鉄鋼やアルミニウム、医療業界で不可欠な注射器や針、エネルギー政策で重要なレアアース(希土類)や太陽光パネルなどを対象とする一方、国家安全保障と無関係の日用品などは除外するという。 関税引き上げの議論を主導するのはトランプ氏が指名した新財務長官や商務長官だが、政権発足まで2週間となった現時点でも詳細な計画は策定されていない。トランプ氏は大統領選勝利後、選挙公約とは別に「不法移民と麻薬の取り締まりを強化しなければメキシコ、カナダに対し25%、中国に10%の関税を課す」と発表済みだが、この計画との組み合わせも定まっていないという。 関税の大幅引き上げは、製造業の復活を唱えて当選したトランプ氏の目玉政策。トランプ氏は自らが運営するネット交流サービス(SNS)に「実在しない匿名の情報筋から引用し、関税政策が縮小すると誤って報じている。フェイクニュースの一例だ」と報道を否定した。 だが、公約通りに関税を引き上げれば、米国内のインフレ再燃に加え相手国からの報復関税で米経済が痛手を負いかねない。関税引き上げの是非を巡り、「次期政権内で推進派と慎重派の議論が長引いている」(米アナリスト)との見方もある。【ワシントン大久保渉】