キャスター草野仁がホリエモンに「実際会ったら印象全然違う」と感じたワケ
名キャスターとして知られる草野 仁(くさの・ひとし)さんは数々のインタビューを行う中で、「先入観を捨てて人と向き合うことが、真実に迫るカギである」ことにたどり着いたそうだ。その1つが堀江貴文さんと向き合った時だったという。先入観を捨てて接すると意外な真実が明らかになることもある。
※本記事は『「伝える」極意』を再構成したものです。
事前に相手に勝手な色づけをしない
相手と向きあう前には、一体どんな人なのか、あれこれと予想したくなるかもしれません。 事前情報から「すごく立派な人のようだ」とか、反対に「気難しい人らしい」などと、期待や想像を膨らませるときもあるでしょう。無理もないことです。 ですが、私は長年この仕事をしてきて、事前に相手に勝手な色づけをしてはいけないという信念をもっています。 インタビューをする側は、その人の実像というものを、そのときに交わす会話を通じて探り出すのが本当だと思うのです。 自分の頭の中に描いていた相手のイメージに、目の前の人を当てはめていくのではなく、現場で本人から実際に聞いたこと、交わした言葉から実像を探り出していく、それがインタビューの本質ではないかと考えます。 事実、会ってみると、事前の評価とは違って、「こんな人だったのか」と認識を新たにする経験を何度もしてきました。 その中の一人に、堀江貴文さんがいます。
決して裏切るような態度を取らずに相手に接する
堀江さんは東京大学在学中に起業し、2000年4月、27歳で東証マザーズに上場を果たし、30歳で資産60億円の長者に登りつめました。その後、プロ野球球団の買収を申し出たり、2005年にニッポン放送の株式を買収して筆頭株主になったりと、時代の寵児として注目され、多くのメディアに取りあげられました。 当時の世の中は、堀江さんに対して多くのマスコミが「なんだこの若造は。ちょっと金を儲けたからといって、調子に乗って」と、反発をもって受け止めていました。 私は、当時司会を務めていた日本テレビの『ザ・ワイド』で彼にインタビューをする機会がありました。 九州の出身であることと、出身大学くらいしか共通項はなかったのですが、とにかく、「彼が本当のところは何を考えているのか、よく聞こうじゃないか」と、批判や批評の言葉を一切向けることなく臨みました。 そうしたら、堀江さんの反応は大変よく、1時間半くらい、いろいろと懇切丁寧に質問に答えてくれました。マスコミに対して斜に構えたそれまでの印象とは違って、今の自分の思いと、これからどうしたいのかということを、きっちり話してくれたのです。 自分たちの先入観で判断せずに、謙虚かつ誠実に、決して裏切るような態度を取らずに相手に接していく。このような姿勢で臨み、とてもいい内容のインタビューを録ることができました。 その思いは堀江さんにも通じていたかもしれません。その後すぐ、自身のX(当時はTwitter)で、好印象だったという感想を投稿してくれていました。