カギとなるのは安心感。ストレスを減らす「セルフケア神経」って知ってる?
問題は慢性的なストレス
でも、迷走神経は私たちの要求についてこられない。「人間の遺伝的進化と現代の生活環境の間には不一致があります」と話すのは、総合診療医で著書に『The 4 Pillar Plan』を持つランガン・チャテルジー。 「この不一致こそが多くの現代病の核心であり、(その問題を解決する上で)迷走神経は重要な役割を担っています。逃走・闘争反応は緊急事態のためにありますが、常に攻撃を受けている感じがするのは現代の生活のせいでしょう」 チャテルジー医師いわく、狩猟採集民族は暇を楽しんでいたけれど、現代人は自分が暇になることを許さない。だから迷走神経が働きすぎ、疲れすぎになってしまう。 正常な機能を失った迷走神経は“活性が低い”状態になる。神経科学者でコーチのマグダレナ・バク=マイアー博士によると、これはストレス反応を落ち着かせる能力が低下した、あるいは完全に失われた状態。 「私たちが恐怖や不安を感じているとストレスは増える一方なので、体のバランスを整える迷走神経の能力が一段と妨げられてしまいます」とバク=マイアー博士。「だから慢性的なストレスは有害なのです。恐ろしい出来事の記憶でさえも、あまり頻繁に思い起こすと迷走神経の活性を低下させます」 腹筋を鍛えるのはいいけれど、ストレスに対する防御力を高めたいなら迷走神経も一緒に鍛えて。まずは、オームを唱えてみよう。ウェルネスリトリートYeotown Health Retreatsのポジティブ心理学コーチでヨガ講師のメルセデス・シーフによると、低くて長い『オーム』という音は、迷走神経の起点である口蓋と喉の奥に響き渡る。 迷走神経は低周波音と振動に反応する。そして、その振動が喉の奥から胸骨の裏を通るときは、迷走神経がもっとも刺激されやすい。 ヨガのウジャイ呼吸法(喉の奥を鳴らす呼吸法)も同じ理由で効果的。米ボストン大学医学部の精神医学・神経学助教授クリス・ストリーター博士の研究では、ヨガは迷走神経を活性化して、ストレス関連の疾患を改善することが分かった。 その目的で開発されたアプリもある。スマホと連動するSensateは小石のような形をしたウェアラブルデバイスで、低周波音の振動を胸部から迷走神経に伝えてくれる。 「このデバイスは、ストレスや不安といった慢性的で複雑な問題を抱える患者のリカバリーを早めてくれます」と話すのは、このデバイスを生み出した鍼療法士のステファン・クメリク。「他の治療には反応しなかったのに、これには反応する人もいますよ」 このデバイスの効果には裏付けもある。6週間の実験で100名以上のボランティアがSensateを1日10分使ったところ、ストレスからの回復力が86%向上した(測定には心拍変動が用いられた)。