カギとなるのは安心感。ストレスを減らす「セルフケア神経」って知ってる?
セルフケアという言葉は、その意味するところが曖昧と思われがちで、チャクラと同じくらいまともに扱ってもらえない。でも、人間の体内には“セルフケア神経”なるものが存在する。 【写真】疲れすぎていない…?休暇を取るべき8つのサイン それは、人体に生まれつき備わっているコルチゾール鎮静装置の“迷走神経”。迷走神経は体内でもっとも大きい神経系の1つであり、最近はストレスがもとの現代病(不安障害や過敏性腸症候群、さらには不妊)の治療に関連して研究されている。 脳幹から耳と喉の奥を通り、腸で分岐して臓器と脳にメッセージを伝える迷走神経は、体と心をつなぐブロードバンド回線のようなもの。「直感で~な気がする」ときは、迷走神経が働いている。 この迷走神経を刺激する迷走神経刺激療法(VNS) は、てんかん、片頭痛、耳鳴りなどの治療に用いられているけれど、この神経そのものがストレスに対して発揮する力を調べる研究は比較的新しい。 米テキサス大学では、迷走神経を刺激することで心的外傷後ストレス障害(PTSD)の症状を緩和する研究が進んでいる。 また、迷走神経を整える古代のセルフケア方法(ヨガ、瞑想、チャンティングなど)には、驚くべき鎮静作用があることも分かってきた。 それゆえに“セルフケア神経”と呼ばれる迷走神経は、私たちがケアした分だけ私たちをケアしてくれる。問題は、どうやってケアするか。イギリス版ウィメンズヘルスから見ていこう。
迷走神経の鎮静作用
プレゼンの最中にパワーポイントがフリーズしたときや、パートナーから冷たいメッセージが送られてきたときは、交感神経系が優位になって心臓がドキドキしたり、手のひらに汗をかいたり、胃がキリキリしたりする。こうしたストレス反応にブレーキをかけてくれるのが迷走神経。 迷走神経系は呼吸と心拍数を落ち着かせ、あなたを休息・消化モード(副交感神経系が優位の状態)に戻してくれる。 このストレス軽減作用が発見されたのは1921年。ノーベル賞を受賞した生理学者オットー・レーヴィは、迷走神経を電気で刺激すると心拍数が下がることを証明した。 レーヴィはのちに迷走神経が筋活性や睡眠に関係するアセチルコリンという神経伝達物質の分泌を誘発することも発見した。 アセチルコリンは体が炎症と戦う仕組みの一部なので、レーヴィの発見により、急性あるいは慢性の炎症を特徴とする疾患(自己免疫疾患やうつ病)の治療に迷走神経刺激を用いる道が開かれた。 臨床精神医学誌『Journal of Clinical Psychiatry』掲載の論文によると、うつ病の人は血中の炎症マーカーが46%も高い。 英ケンブリッジ大学の神経科学者で著書に『The Inflamed Mind』を持つエドワード・ブルモア教授は、現在のうつ病蔓延の原因が慢性的なストレスによる炎症にあると考えている。