福岡城の天守閣「江戸時代初期に建築、迅速に復元的整備を」…民間の懇談会が福岡市長に報告書提出へ
国史跡の福岡城跡(福岡市中央区)の天守閣の整備に向けて議論する「福岡城天守の復元的整備を考える懇談会」は20日、「天守閣は江戸時代初期に建築され、後に破壊された」と結論づけ、「迅速に復元的整備を進めることが適切」とする報告書をまとめた。来年1月にも高島宗一郎市長に提出する。(林航) 【写真】福岡城跡の天守台に設営され、ライトアップされた「幻の天守閣」
福岡城の天守閣を巡っては、これまでに存在を直接的に示す絵図などは見つかっていないが、黒田家家臣が「天守を建てた」と記した書状など、存在を示唆する史料が発見されている。
懇談会は今年3月に福岡商工会議所が設置し、有識者ら10人で構成。史料が少ない中での天守閣整備に向け、手法や課題を検討してきた。
懇談会がまとめた報告書では、これまでに見つかった書状を踏まえ、天守閣は1602年(慶長7年)から建てられ、20年頃には壊されたと結論づけた。規模や構造は、福岡藩(52万石)と同等の石高の姫路藩が同時期に築城した姫路城の天守閣と同じ五重6階、地下1階(高さ約26メートル)と推計。色は現存する多聞櫓と同様に黒を基調としていたと推測した。
さらに福岡市に対して、天守閣の全容解明に向けた史料収集や天守台の発掘調査を進めるよう提言。天守閣の復元が「極めて困難」としている市の整備基本計画の見直しも求めた。今後の課題については、整備する場合の資金調達や文化財保護などを挙げた。
また、文化庁が2020年に設けた復元的整備に関する基準について、「緩和されているものの、実態は従来とほとんど変わっていない」として、同庁に対し、市民感覚に基づいた基準とし、弾力的に運用することを求めた。
懇談会の座長を務めた元文部科学省次官の山中伸一・角川ドワンゴ学園理事長は記者会見で、「福岡城で復元的整備ができれば、天守閣整備に向けてせめぎ合いが続く全国各地での突破口になる」と期待を寄せた。
懇談会顧問の谷川浩道・商議所会頭は「しっかりとしたものを造れば、時間がたつにつれて文化財的な価値を持つようになる。街の中心にシンボルがあることが若い人たちのアイデンティティーにつながる」と強調した。
オブザーバーとして懇談会の議論を見守ってきた福岡市は、天守台の発掘調査に向けて文化庁と協議を進めている。高島市長は20日の定例記者会見で「現時点では、まずあったかどうかの調査をしっかり行っていく」と述べた。