「日本円は紙くずになる」!?…デフレに悩まされ続けた日本国民が次に直面する「インフレの悪夢」
「日本円は紙くずになる」の嘘
永濱:「日銀は利上げできない、だから日本円は紙くずになる」という観測もあります。日銀は異次元緩和で大量の国債を買っています。ただ、国債は金利が上がると価格が下がるため、利上げすると、日銀のバランスシート上の資産が減ることになります。もっとも、日銀は国債の時価評価を採用していないのですが。 一方、日銀には各金融機関から資金を預かっている「当座預金」がありますが、金利が高くなると、その分利子をより多く払う必要があります。金利が高くなると、利払いが日銀の収入を上回る「逆ザヤ」になります。そのため、利上げすると日銀が債務超過に陥ると心配する向きもあります。 ただ、一般企業とは違い、貨幣を発行できる中央銀行は債務超過でも問題ありません。実際、アメリカのFRBや、オーストラリア準備銀行は利上げに伴い債務超過に陥りましたが、特に何も起きていません。 エミン:「日本円が紙くず論」は一部の論者が言っていることですが、彼らの真意は「日銀が債務超過で潰れる」という点ではないようです。要するに、そういう苦しい状況になれば、政府が日銀に資金を注入しなければならなくなる。そのために円をもっと発行することになるが、それは金融緩和と同じこと。だから利上げしても円安を止められない、ということのようです。 たしかに一理ありますが、私はそこまで悲観的ではありません。なぜなら、世界の中央銀行はみな同じような状況にあるから。この状況で日本円だけが独歩安になるとは思えない。むしろ巨額の外貨準備高を持つ日本は、他国に比べると「通貨が紙くずになる」リスクが低い気がします。
円高進行への兆し
永濱:そうですね。日本の対外純資産は約470兆円と、世界最大ですから。 エミン:そうそう。日本がそんな事態になるなら、トルコはもっとひどいことになっていますよ(笑)。トルコの外貨準備は10兆円以上のマイナスですから。それでもトルコは国として機能している。日本はまったく心配する必要はありません。 もう一つ、いまの状況が永遠に続くわけではありません。いずれアメリカはどこかのタイミングで利下げしてきます。それに合わせて日本も引き締め的に動けば、ドル円相場は反転して円高方向に動くでしょう。 たしかに利上げすれば、日銀のバランスシートは悪化します。債務超過になるかもしれませんが、それは一時的なもの。だから本来日銀はもっと機動的に金利を上げたり下げたりできるはずなのですが。 『「アベノミクスの真価が問われる」...日銀がどうしても避けたい異次元の金融緩和の「最悪の結末」とは』へ続く
永濱 利廣、エミン・ユルマズ
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