空手から学んだ強さと優しさの源 2027年世界大会に向けて歩む“極める道”【#青春のアザーカット】
連載「#青春のアザーカット」カメラマン・南しずかが写真で切り取る学生たちの日常
学校のこと、将来のこと、恋愛のこと……ただでさえ悩みが多い学生の毎日。青春時代はあっという間に過ぎてしまうのに、コロナ禍を経験した世の中はどこか慎重で、思い切って全力まで振り切れない何かがある。 【写真】南カメラマンがレンズで捉えた西村くんの空手道 便利だけどなぜか実感の沸かないオンライン。マスクを外したら誰だか分からない新しい友人たち。そんな密度の薄い時間を過ごした後、やっぱりリアルは楽しいと気付かせてくれたのは、スポーツや音楽・芸術・勉強など、自分の好きなことに熱中する時間だったりする。 「今」に一生懸命取り組む学生たちの姿を、スポーツ・芸術など幅広い分野で活躍するプロカメラマン・南しずかが切り取る連載「#青春(アオハル)のアザーカット」。何よりも大切なものは、地道に練習や準備を重ねた、いつもと変わらない毎日。何気ない日常の1頁(ページ)をフィルムに焼き付けます。(取材・文=THE ANSWER編集部・佐藤 直子)
30頁目 国際空手道連盟極真会館 東京城北支部 中央大学3年・西村大河くん
空手を始めたのは幼稚園の頃。以来、道場に通い続けること15年あまり。道場は「第2の家」とも呼べる場所になった。 きっかけは、気弱で泣き虫な息子が少しでもしっかりすれば、という両親の願いだった。「本当に泣き虫で、年下の子にも言い返せないくらいでした」。西村くんは当時を思い出しながら、バツが悪そうに笑う。 「始める前は正直、怖いイメージがありました。でも、道場の雰囲気が良くて、すぐに行くのが楽しみになったんです。『よし、今日は空手の日だ!』って。小学生の頃はまったく試合で勝てなくて、地区の大会でようやく入賞できるくらいでした。同じ支部に強い選手がたくさんいたので、全然歯が立たない。強い選手に胸を借りるつもりで全力で向かっていっても、やっぱり勝てない。それがここまで続くなんて、自分でもビックリです(笑)」 なかなか勝てない日が続いたが、それでも空手が楽しかった。道場には分支部長として取りまとめる相見秀樹先生を筆頭に、年配者から子どもまで幅広い年齢層の空手家が集まる。稽古は真剣そのもの。時にはきつく感じることもあるが、終われば年の差は気にせずに和気あいあい。「道場に一体感があるんです。練習ではライバルでも、終わったらみんな仲がいい。先輩も後輩もお互いのことをよく知っているので、気兼ねなく接することができる安心感があります」と絆を深めた。 道場には文字通り、毎日通った。小学校から帰宅すると、すぐに道場へ出掛けて空手に打ち込む。再び家に戻るのは夜。「遊ぶ時間は少ないけれど、その分、空手に熱中できるのが楽しくて。道場には土曜日も行きましたし、春休みや夏休みになると朝から晩まで練習がある。家より道場にいる時間の方が長いくらいでした」。道場通いはあまりに自然に日常と化していた。