おひとり様女性3人、健康や孤独、老後資金を語り合う「『助けて』を言える関係を作る。不安があっても<楽しく下っていく人生>を目指して」
おひとり様として迎える将来、多くの人が不安に感じているのは、健康、お金、孤独と言われています。ひとり暮らし真っただなかの《達人》たちは、どのような備えをしているのでしょう(構成:山田真理 撮影:木村直軌) 【写真】吉永みち子さん「孤独の不安があるなら、まずは一歩、外へ出てみたらいいのよね」 * * * * * * * ◆お金の不安はあれど、いまを楽しむ 小谷 物価高や年金問題……、老後のお金の悩みは尽きません。 吉永 私はずっと自由業だったから、国民年金が月6万円弱だと前々からわかっていた。働けなくなったら何が私を助けてくれるだろうと考えて、住まいを賃貸から分譲に替えました。 50歳を過ぎるとローンを組むのも難しくなると聞いて、その前に駆け込み購入。返済が滞っても困るのでしゃかりきに働いて繰り上げ返済し、60代で完済しました。いまも働き続けています。 小谷 女性は、国民年金だけが老後の収入源という人が多いので、長生きリスクとお金の問題は依然として深刻な問題ですね。 稲垣 私は、3・11の原発事故をきっかけに節電生活を始めました。冷蔵庫、電子レンジ、洗濯機などの電化製品を手放し、「なくても案外なんとかなる」とわかったことが、お金を含めた老後の不安の解消につながっています。 会社を辞めることができたのも、ないならないなりにやっていけばいいんだなと思えたから。家賃の安い部屋に引っ越して、光熱費は最低限。食事はほぼ自炊で一汁一菜となれば、暮らしにかかるお金はびっくりするほど少ないし、規則正しい粗食生活なのでとても健康(笑)。 家賃が払えなくなったら、もっと小さくて安い部屋に引っ越すか、友達の家に居候させてもらうつもり。
小谷 皆さん、ちゃんと考えていて偉いです(笑)。私も50歳からフリーで仕事をしていますが、もともと物欲がないし、お金がなければ外食を控えよう、くらいのどんぶり勘定。収入があれば使って、人生を楽しみたいという気持ちが強いです。 吉永 それは伴侶を若くして亡くしたことも関係していますか。 小谷 夫は厚生年金を支払っていましたが、子がおらず、一定の収入があった私には遺族年金の受給資格がありませんでした。つまり、彼が20年間にわたって支払った千数百万円はパー。 「そんなアホなことあるか!私は自分のお金を生前にあげたい人に渡そう」と思って。若い頃に縁があったアジアの国に恩返ししたくなり、カンボジアで若者にパン作りを教えたり、がん患者の団体に寄付をしたり。 最近も単身高齢者のための食堂を始めようと、知人の飲み屋さんの協力を得ましたが、「消防設備に費用がかかる」というので、「なら私が出しましょう」と。 吉永 そりゃあ少々ばらまきすぎじゃない!? もう少し、ご寄付も計画的にというか。(笑) 小谷 ひとりになったとき、あとは「やりたいことをやって、人生をまっとうしよう」と思ったんです。まだその日暮らしの人も多い国々を旅していると、お金というのは人生を楽しむ手段であって、何かを我慢してまで将来に備えるのは違うような気がしてきて。
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