おひとり様女性3人、健康や孤独、老後資金を語り合う「『助けて』を言える関係を作る。不安があっても<楽しく下っていく人生>を目指して」
◆節約生活が健康の秘訣 吉永 健康も似たようなところがあるよね。もちろん病気やケガは大きなリスクだけど、「将来が不安だから」と、好きなものを我慢して死ぬのは本末転倒な気がする。おふたりはまだ若いけど、健康についてはどう? 稲垣 私はお金を使わない暮らしで自然と健康になりました。日々自炊でメニューは飯・汁・漬物ですから、健康志向とかじゃなくても添加物が入る余地がない(笑)。 洗濯機がないからタライで服を手洗いし、朝6時からホウキで掃いて雑巾で拭いて……と、体も使う。銭湯の大きなお風呂で、常連のおばあちゃんと話しながら汗を流すのは、日々の最大の楽しみ。これも健康の秘訣のひとつだと思います。 吉永 私はずっと運動が大っ嫌いで、何でも三日坊主。でも膝を悪くして、「このままだと自分の足で歩いて飲みに行けなくなる」と危機感を抱き(笑)、5年前から筋トレを始めたんです。毎日体操を1時間、ジョギングやウォーキングを30分。人生でいちばん筋肉がついてます。 小谷 お会いしたときから、年齢を感じさせない姿勢の良さだなあと感心していました。 吉永 すべては日々、美味しく仲間と酒を飲むため。(笑) 小谷 私は健康に関しても無頓着で(笑)、何もしていません。頼れる家族もいませんし、介護が必要になったら自宅マンションを売って、フィリピンに移住するのもいいかなと思案中。 学生時代にお世話になった家族と現在も交流があるのですが、フィリピンでは在宅ナースの制度が発達していて、93歳のお母さんも頼んでいるそうなんです。 吉永 なるほど、そういう腹のくくり方もあるかもしれないね。
◆孤独の不安があれば一歩、外へ出てみる 稲垣 私は「楽しく下っていく人生」を目指して暮らしていますが、いま、小学生のとき以来のピアノを習っています。子どものときは練習がイヤで投げ出したけれど、発表会に出るとか何か達成することは目指さずに、ただ練習するのが面白くて。 小谷 それは楽しそう! 稲垣 ピアノが多少上手くなったからって何になるわけじゃないんですけど、そこが最高なんですよ。目標を持たずに、そのことをただただ楽しめるって、人生後半戦の特権だと思います。一喜一憂する狭い世界から解き放たれた自由ったらない。 下っていくって惨めなことのように思われがちですが、何かを失うと、別のものがやってくる面白さがあるんですよね。 たとえばいまの家に越してきたときも、周りに知り合いはゼロ。だから個人商店で買い物をしたり飲食店の常連になったりして顔見知りを増やして。そうしたらいま近所に100人以上の友達がいる。 銭湯で「あの人、今日は来てないね」なんていう世間話が日常になると、もし自分が明日孤独死しても、すぐ見つけてもらえると思えるんです。 吉永 すごいねえ。私なんて近所に知り合いはほとんどいない。愛犬がいた頃は、「Aくんのママ」として、犬仲間と散歩途中におしゃべりしたものだけど。 小谷 人づきあいがあると、世界が広がりますね。私はコロナ禍の外出制限で誰とも会えなくなったとき、マンション周辺のゴミ拾いを始めたら、近所の人から「消防団のなり手が少ないので入団しませんか」とスカウトされて(笑)。訓練に参加したり、今日も午前中に近所の小学校で夏祭りのお手伝いをしてきました。 吉永 孤独の不安があるなら、まずは一歩、外へ出てみたらいいのよね。私も地域のシニア講座とか、いずれ顔を出してみようと目星をつけています。
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