裏金問題立件見送…「力を持たない民が大きな変化を」元テレビ東京Pが『ジャンヌの裁き』に込めた思い
これは時代性の変化による部分も大きいと言う。 「『巨悪は眠らせない』の頃はまだ完全懲悪とのわかりやすさが受け入れられていましたが、今は情報化社会によって、表の顔と裏の顔の境目がわからなくなっている。 そういう時代性を反映させたネタを探していたとき、安倍晋三元首相が亡くなる前、桜を見る会の一件が不起訴にされたことを検察審査会が差し戻したという話が新聞に載っていたんです。 私は法学部出身なんですが、お恥ずかしながら検察審査会というのは言葉では知っていても、よくわかっていなかった。私が企画出しした’21年末当初、社内でも『検察審査会を』と言ったとき、みんなよくわかっていなかったんですね。 私自身、検察が何かの事案に反対するくらいのイメージしか持っていなかったところ、この一件で検事が不起訴にしたものを差し戻せるぐらい検察審査会というものは力を持っているんだと思って、びっくりしたんです」 ◆「すごいことですよね。2回審査会が起訴だと言えば、検事に勝っちゃうわけですから」 その後、黒川弘務・元東京高検検事長の賭け麻雀事件や、高齢ドライバーの池袋暴走事故、最近では五ノ井里奈さんへの元陸自衛隊員の強制わいせつ事件などで、今でこそ検察審査会が注目されるようになったが、当時は新聞でもごく小さな扱いの記事だったと言う。 「それで、この図式で描いたら、もしかしたら検事というものが悪になるかもしれないな、と。しかも、かつて検事をやった玉木さんがやるのが面白いなと、玉木さん側とも盛り上がったんです」 田淵教授がもう一つ注目したのは、「法の番人」と言われる絶対権力の検事に、一般市民が立ち向かうところ。 「検察審査会が起訴相当として差し戻し、もう1回検事が不起訴にしたら、2回目は無理やり起訴にできるわけですよ。 これってすごいことですよね。2回審査会が起訴だと言えば、検事に勝っちゃうわけですから。 ただし、過去にも私のように検察審査会というシステムに着目した人はいたんじゃないかと思うんです。でも、テレビ局は忖度の塊なので、民放のキー局もNHKも含めて、政府という大きな権力に対して立ち向かうという企画はなかなか通らないところがあって。 その点、テレビ東京は『やってもいいんじゃないの』と言ってくれる局なので、テレビ東京だから成立したところもあるのかと私は思っています」 とはいえ、自由度の高いテレビ東京でも、企画を通すのは困難だったはず。どのように根回しをしたのか。