「手仕事は世界に誇れる日本の強み」 有松で400年続く伝統技術の未来を担うスズサン5代目が語る
そして、経営学を専攻していたドイツ人のルームメイトが、たまたま家に置いてあった有松絞りの布を気に入ったことから、一緒にデュッセルドルフで起業。5枚のスカーフから、スズサン初のオリジナルブランド「スズサン」をスタートした。ただ、最初から順風満帆だったわけではなく、ヨーロッパ各地のセレクトショップにアポ無しで飛び込み、説明してまわったという。その時、最初に買い付けてくれた店の一つが、アンドレアス ムルクディスだった。
世界を知るデザイナーの発想と日本の職人技術の融合
今回のイベントのきっかけになったのは、2022年にパリのギャルリー・ヴィヴィエンヌで開かれた名古屋市主催の伝統産業海外マーケティング支援プロジェクト「クリエイション・アズ・ダイアログ(Creation as DIALOGUE)」のイベントだった。村瀬CEO兼クリエイティブ・ディレクターは、世界を知るデザイナーの新しい発想と名古屋に根差す伝統的な手仕事を結び付け、海外での販路開拓を目指す同プロジェクトのクリエイティブ・ディレクター兼統括コーディネーターを務めており、自身でバイイングをしているアンドレアス・ムルクディス=オーナーのことも招待。アンドレアス ムルクディスでは、もともといくつもの日本ブランドを取り扱っていたが、会場でムルクディス=オーナーはモノづくりの背景や技術に感銘を受けたという。
「クリエイション・アズ・ダイアログ」では、「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」でバッグデザイナーを務めていた古川紗和子、「ヴァン クリーフ&アーペル(VAN CLEEF & ARPELS)」などでジュエリーデザイナーのキャリアを積んだ名和光道、建築事務所ヘルツォーク&ド・ムーロン(HERZOG & DE MEURON)出身のダイスケ・ヒラバヤシの3人を起用し、伝統工芸を手掛ける10社の職人をマッチング。革新的な新製品開発に取り組んだ結果、仏壇製作のノウハウを生かした木製のバニティーボックスや、モダンアートのような配色で仕上げられた漆塗りの燭台と香立て、七宝焼きのジュエリーなどが生まれた。それらに加え、今回の「ハンズ・イン・ジャパン」では、長野の山翠舎によるブランド「サンスイ(SAUSUI)」の解体された古民家の木材を使ったオブジェや、東京の廣田硝子によるあぶり出し技法を用いたグラス、線香の生産地として知られる淡路島の薫寿堂がパリ拠点「サノマ(CANOMA)」と共同制作したインセンス(お香)などもラインアップする。