「手仕事は世界に誇れる日本の強み」 有松で400年続く伝統技術の未来を担うスズサン5代目が語る
海外からの視点で見る日本の伝統工芸
村瀬CEO兼クリエイティブ・ディレクターがこういったイベントに携わる背景には、「なくなってしまう寸前の日本の伝統的な手仕事を、次世代につなげたい」という熱い想いがある。「日本には経済産業省に指定された『伝統的工芸品』が241もあり、本当に手仕事が盛んな国。そんな国は他にはほぼなく、世界に誇れる日本の強みだと思う。しかし、その多くは、次世代の後継者がいなかったり、現代的に表現する方法を知らなかったりという課題に直面している。15年前は自分の家業も同じような状況で職人は父一人だったが、今では若者も含め職人が19人にまで増えた。お金も経験もコネもなくゼロからスタートした『スズサン』での自分自身の経験を他の伝統工芸にも生かしたい」。
その経験から語るのは、「日本のクラフトは“メード・イン・ジャパン”と声高に主張しがちだが、その必要はない。手に取ってもらうきっかけは美しい色や心地よい手触りなどでいいと思う。けれど、背景にある伝統技術やストーリーを異なる文化背景を持った人に理解してもらうのは工夫が必要」ということ。「日本の伝統工芸の多くは上質で美しく、それを生み出す職人は素晴らしい技術を持っている。一方、彼らはある意味、井の中の蛙のようでもある。もちろん、長年同じものを作り続けている職人たちが自分たちの作品や製品を“世界一”だと考えるのは当たり前だ。しかし、いかに優れた製品であっても、職人たちが自分たちの立場で考えて『良い』と思う伝え方や見せ方は、必ずしもベストではない。海外市場においては、伝統的な使い方がフィットしないことも多い。外からの客観的な目線が必要だ」。そういった意味で海外を拠点にするメリットは大きく、「自分が入ることで、海外で受け入れられる方法やアイデアを日本の伝統工芸にもたらすことができると思う」と続ける。
「世界の人に日本の職人のもとを訪れてもらいたい」