子供だけ乗車して…親はバイバイ?タクシー運転手が見た「配車アプリ」で増えた“変わったお客さん”たち
大通りに出てタクシーを探していたのは昔の話。今は配車アプリで自宅や会社の前など迎車地や目的地をピンポイントで指定できる。そのせいか、新たなタクシーの使い方をする人が増えていることを実感する。 東京都内を実際に走っている現役ドライバーの筆者が、最近なるほどねと感じているアプリ利用の例をご紹介しよう。
不動産屋の内見ツアー
迎車地は不動産屋前。到着すると乗り込んできたのはスーツ姿の男性とラフな格好の夫婦らしき2名。行先は2kmほど離れたマンションのエントランス前だった。車内の会話から賃貸物件を探している夫婦の内覧に向かおうとしていることに気づいた。 もちろん支払いは全て不動産会社の決済で、現地に着けばこちらの仕事は終了。内覧が終われば再び営業マンがアプリで車を手配するようだ。一見不経済に思える使い方だけど、不動産屋は自前の送迎車を用意する必要がなく、その経費も不要。交通違反や内覧中の駐車料金の心配も不要なのでトータルでお得なようだ。
店の商品を運ぶ
タクシーを宅配的に使うケースもある。とくに印象深いのは、筆者がよく走るエリアにある洋菓子店。これまで3回アプリで呼ばれ、その度に複数の段ボール箱に入った商品と従業員が乗ってきた。車内は一気に甘い香りに包まれる。 目的地はいつも同じ、この洋菓子店の支店だ。道中、従業員に話を聞くと、本店で作ったお菓子を支店に定期的に運ぶために使っているという。こちらも自社の車を用意する必要がなく、免許を持たない従業員に搬入を任せられることから大いに利用しているとのこと。 ちなみに支店は細い路地が入組んだエリアにあるため、たとえ自社の車があっても運転に慣れていない人には任せられないという話もあった。
母親に見送られつつ子供を託される
住宅街の家が迎車地で目的地は5kmほど離れた学校という依頼。迎車地に待っていたのは中学生くらいの男の子とその母親らしき組合せ。しかしドアを開けると乗り込んできたのは子供のみ。あれれと思っていると「行先は〇〇学校になっていますよね。遅れそうなので急ぎ目でお願いします」と母親。 でも今日は休日だ。不思議に思って車中で学校のどの場所に付けるか確認しつつ尋ねると「英検の試験があるのに寝坊しちゃって……」だそうな。学校に着くと周囲には同様にひとりでタクシーで乗り付けた子供の姿を複数見かけた。昭和のおじさんには驚きの光景であった。