子供だけ乗車して…親はバイバイ?タクシー運転手が見た「配車アプリ」で増えた“変わったお客さん”たち
小さな子供がひとりで乗車
迎車地は中央区の某ビル前。配車アプリによると依頼人は30代の女性になっていた。けれどそれらしき人がなかなか現れない。もしやキャンセルかなと思っていると、こちらをじっと見ている5歳くらいの女の子に気づいた。 その子は目が合うと手に持ったスマホの画面をこちらに向け「〇〇です」と名乗った。依頼人と同じ苗字だった。ドアを開けると慣れた感じで乗り込んできた。念のため「お母さんは後から来るの?」聞くと「お母さんは家で待ってます」と。 どうやらこの子は塾に通っていて、帰りはいつも母親が手配したタクシーで家まで送り届けてもらっているらしい。母親としてはタクシーが今どこにいるかリアルタイムでわかるし、迷子になる心配も少ない。5分ほど走って到着した一軒家では到着寸前、玄関から母親が出てきて女の子を迎えていた。時代は変わったなと思った瞬間だ。
混雑から脱出するために乗車
都心の大きなターミナル駅には専用のタクシー乗り場があり、混雑時にトラブルが起きないよう、アプリはその周辺を迎車地にできない仕様になっている。ところが、少しだけ離れれば迎車地に設定できてしまうスキマがあり、大混雑のタクシー乗り場を尻目に乗ってくる人たちがいる。 別に不正をしているわけじゃないし、こちらも正規に呼ばれたので迎えに行くしかないのだが、乗り場で延々と待っていたであろう人たちからの「やっと来たタクシーになぜ並んでもいない奴が乗るのか!?」的な視線がかなり痛い。 正直な話、ドライバー側もできればこんな場所で乗せたくない。けれどアプリ配車を勝手にキャンセルするとペナルティに繋がる。この仕組み、どうにかしてほしいものだと毎回思うのであった。
救急車の替わり?
日本人男性の名前で配車依頼があり、迎車地に向かっている途中「電話をしてください」とメッセージが入った。 すぐに対応すると、その男性曰く「乗るのは僕ではなく、友人の外国人女性です」とのこと。なるほど、日本語が話せない人だからこうして配車アプリを使って送ってあげるのねと納得した。ところが、話を進めていくうち、やっかいな依頼であることに気付いた。要約すると、 ・その外国人女性は体調が悪いので、目的地は英語診療OKの病院になっている ・自分は離れた場所にいて一緒に行くことができないので、連れて行ってあげて ・診療受付時間が昼までなので、間に合うよう送ってほしい ・高速道路を使って構わない ・では、よろしく 困惑しながら迎車地に着くと、確かにそれらしき女性が待っていた。もし、立っていられないほど体調が悪いのなら、ひとりで乗せるのは危険だとの思いもあったが、男性の名前を出して確認すると安心したような顔で頷いた。これなら大丈夫そうだと判断し、首都高を使い約30分かけて目的の病院まで送り届けたのであった。 <TEXT/真坂野万吉> 【真坂野万吉】 フリーライター。定時制で東京を走り回っている現役の中年タクシードライバー
日刊SPA!