3億円超のスーパーカーに乗った! 新型GMA T.50という異次元のクルマとは
GMA(ゴードン・マーレイ・オートモーティブ)が手掛けた新型「T.50」は、異次元のスーパーカーだった! 助手席でのインプレッションを大谷達也がリポートする。 【写真を見る】新型GMA T.50の全貌!
崇高なサイクル
「スーパーカーのルールブックを書き換える」 ゴードン・マーレイが久々に手がけたスーパースポーツカー、T.50のプレスリリースには、冒頭にそう記してある。 もちろん「スーパーカーのルールブック」というのは比喩的な表現で、現実に存在するわけではないけれど、たしかに現代のスーパースポーツカーにはある種のルールというか不文律が存在しているように思える。 それは、とにかくパワフルなエンジンを積んで、エキゾチックなスタイリングに仕上げるというもの。その結果、時には一般公道での使い勝手が軽視されていたり、ボディサイズが大きかったり車重が重かったりするモデルがなきにしにもあらずだった。 けれども、T.50はそういったスーパースポーツカーの潮流とは一線を画している。 全長は4352mmだから、フォルクスワーゲン「ゴルフ」よりもちょっと長いだけ。全幅は1850mmなので、メルセデス・ベンツ「Cクラス」と3cmしか違わない。ゴードン・マーレイ・オートモーティブ(GMA)でブランドと製品を統括する立場にある元レーシングドライバーのダリオ・フランキッティは「ポルシェ『ボクスター』のフットプリント(専有面積の意味)と、変わらないよ」というが、実車を目にした印象は、ボクスターよりもむしろ小さく思えるくらいだ。 この小さなボディに、コスワースと共同開発した排気量4.0リッターの自然吸気V12エンジンをミッドシップ。最高出力が670psなのは最新のスーパーカーとして“常識の範囲”だけれど、その最高回転数が1万2100rpmというのは“非常識極まりない”スペックだ。 それ以上に驚きなのは車重が997kgしかない点。ちなみに、1.5リッター3気筒エンジンを積むトヨタ「ヤリス」は最軽量仕様でも970kgある。そこから考えれば、T.50がいかに軽いかがわかろうというものだ。 「僕たちはこれを“崇高なサイクル”と、呼んでいるんだ」 と、前出のフランキッティが教えてくれた。 「ひとつひとつのパーツを軽くできれば、それを支えるパーツのサイズを小さく出来る。すると、これがさらなる軽量化に結びついて、パーツをより小さくできるという好循環が生まれる。クルマが軽ければ同じエンジンでも動力性能が高くなり、ハンドリングが俊敏になるんだ。そして足回りのパーツを軽くできればサスペンションのダンピング性能も改善される。つまり、もしもクルマを軽くできれば、すべての性能を改善できるんだ」 反対に、どこかのパーツが重くなれば、それを支えるためのパーツも重くなり、ひいてはクルマ全体が重くなる……つまり、負のスパイラルに陥ってしまうわけだ。これと同じロジックは、私が2006年にゴードン・マーレイの自宅を訪れたときにも聞いていたが、同様の考え方がT.50にも息づいていたのである。