【住宅ローン専門家が対談】金利上昇と物価高騰で破綻する前に取るべき対策とは?(前編)
銀行は住宅ローンの審査基準をこれ以上低くはしない
――では、家は買わずに賃貸のほうがいい? 淡河 いや、今までの話と矛盾するようですが、買えるなら買ったほうがいい。住居費の総額はだいたい8000万~1億5000万円ほどですが、正直、持ち家と賃貸にほとんど差はありません。であれば、資産価値が残る持ち家を持っていたほうがお得です。 千日 要は、価値のある物件に投資すべきだということですよね。とはいえ、今は不動産価格がかなり高騰しているので、どんな物件が買えるかは住宅ローン次第。銀行側も商売なので、35年が最長だったのを50年に延ばすなど、今までの審査基準では貸せなかった人でも借りられるように策を講じています。ただ、審査基準をこれ以上低くすることはないでしょう。 淡河 要は下駄を履かされて、高い物件が買えるようにさせられていると。 千日 はい。その認識を持つことが非常に大切で、シミュレーションしたうえでちょっと欲張った良い家でローンが下りるような状況であっても、いったん慎重になったほうがいい。 今って不動産市場がちょっとおかしくなってしまっていて、日本人からしたら高くて買えないような物件でも、海外の人からしたら割安だから売れ続けるといった、一部のお金持ちだけをターゲットにしているような価格の決められ方になってきています。そんな高価格帯の物件に背伸びをして手を出してしまうと、やはり厳しいものがあります。 淡河 どんな物件を買うのがいいかは、フリーキャッシュフローといって、自由に使えるお金がいくらあるかという、シンプルな考え方でいいと思っています。ただ、フリーキャッシュフローがいくらあればいいかは一概に断言できません。なぜなら、年収400万円の人の3万円と、年収1000万円の人の3万円とでは、お金の価値が違うからです。だから、それぞれ最低限これだけは譲れないという目安を作ることが大切です。 また、千日さんもおっしゃったように、今は物件のプライス(価格)とバリュー(価値)の関係性にゆがみが生じています。本来の価値以上の割高になっている物件は、絶対に買ってはいけません。間で中抜きしているデベロッパーの思うつぼなので。高いから良い物件だという思い込みは捨てましょう。