貧困、格差、望まぬ妊娠、パパ活…… これまでのフェミニズム作品に描かれていたことから、更に踏み込んだドラマ『SHUT UP』
配信サービスに地上波……ドラマが見られる環境と作品数は無数に広がり続けているいま。ここでは、今日見るドラマに迷った人のためにドラマ作品をガイドしていきます。今回は12月からテレビ東京でスタートした『SHUT UP』について。
貧困・格差・復讐――これまで描かれてきたフェミニズムから、更に新たなことを描く
テレビ東京で月曜の深夜のドラマプレミア23という枠で放送されている『SHUT UP』は、第一話のタイトルが「貧困・格差・復讐」とあって目を引いた。このドラマを見ていると、これまでのフェミニズムを描いたドラマや映画、小説や漫画のことを思い出させるとともに、そこから更に新たなことを描いていることがわかり、毎週の放送が心待ちになってきている。 プロデューサーは、『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』や『うきわ ─友達以上、不倫未満─』、『今夜すきやきだよ』を手掛けてきた本間かなみ。彼女にとっては初のオリジナル作品となるが、毎回、作風が違うものの、ひとつの芯のようなものが通っている気がする。 物語の主人公は、学費や生活費を自分で稼ぎ、学生寮から大学に通う田島由希(仁村紗和)。寮には同じ境遇の恵(莉子)・しおり(片山友希)・紗奈(渡邉美穂)がいて、バイト先でもらったお弁当を分け合ったりしながら、皆で助け合って暮らしていた。 しかしある日、恵がインカレサークルで知り合ったエリート大学生の鈴木悠馬(一ノ瀬颯)との間に望まぬ妊娠をしたことが発覚。しかし悠馬は、自分の子どもであるとは限らないとし、恵からの連絡を遮断。由希らは、恵の中絶費用をパパ活をすることで稼ごうとするのだが、パパ活の客が由希とのやりとりを動画にアップしてしまい…。
昨今、大学生が貧困などを理由にパパ活をしている現実を描いたドラマや漫画などはある。をのひなおによる漫画の『明日、私は誰かのカノジョ』は、MBS/TBSのドラマイムズにてSeason 1、Season 2が作られたが、『SHUT UP』は、そのようなリアルな現状を描きながら始まるサスペンスドラマである。 このドラマに出てくるエリート大学生の鈴木悠馬のキャラクターが良くも悪くも興味深い。彼は将来、起業することを夢見て、大学ではサークルを率いて人脈づくりに精を出している。同じ大学に通う露木彩(芋生悠)という彼女がいて大事にしているが、その裏でインカレサークルに参加する恵のような学生とも一夜限りの関係を持っている。 恵の望まぬ妊娠に対して由希達から抗議を受けた悠馬は、証拠もないのに責めるのはおかしいと言ったり、もうちょっと落ち着いて建設的に話せないか?と由紀らを小バカにしながら諭す。また由紀らのことを、自分の努力が足りないのに、他人のせいにするのが好きな人たちであるとみなしている。つまり、自分の恵まれた環境に無自覚な自己責任論者なのである。女性たちが浅はかな訴えをしてきたが、自分には叶うわけがないという態度からは、姫野カオルコの小説『彼女は頭が悪いから』を思い出させるものがある。 一方、お嬢様育ちで同じ学校に通う彼女には、由希や恵に見せたような狡猾な部分は見せず、家で食事をした後に、彼女と共に後片付けを自然に分担できるような紳士的な面も持ち合わせているのである。