爆上げは続くのか? 米国株のプロが予想する「トランプ2.0で起きること」
GAFAMのトップが続々と祝電を
投資家の皆さんが最も関心を寄せるのは、GAFAMに代表されるグローバルテクノロジー企業ではないでしょうか。 2021年、バイデン大統領がリナ・カーン氏を連邦取引委員会(FTC)委員長に任命して以来、GAFAMをはじめとする巨大テクノロジー企業への規制が強化されてきましたが、トランプ氏が再び大統領に就任すれば、カーン氏は解任されるか、自ら辞任すると見られています。 その結果、GAFAMに対する政府の姿勢が和らぐ可能性があると予想されています。現在テクノロジー企業に対する訴訟が多く行われていますが、共和党政権下では既存の訴訟が和解に向かうのではないかと見られています。 2016年に第一次トランプ政権が誕生した際には、GAFAM企業の対応は冷ややかなもので好意的ではありませんでした。それが、今回はアップルのティム・クックCEOを始め、アルファベットのサンダー・ピチャイCEO、メタのマーク・ザッカーバーグCEOなどが祝電を送っているのです。 アマゾンの設立者のジェフ・ベゾスは、個人的にアメリカの有力新聞「ワシントン・ポスト」を所有しています。選挙前、同紙はハリス候補を支持する社説を用意していましたが、ベゾス氏はその原稿を記事にさせなかったのです。これは明らかにトランプ氏に対する配慮で、彼の機嫌を損ねないための対応です。 彼ら経営者たちは前回の苦い経験がありますから、今回は皆さん賢くなって上手な対応をしたということです。 トランプ氏も残り4年で歴史に残るレガシーを作り、米国経済の成長を成し遂げるためには彼らの手助けが必要ですし、GAFAM企業も米国大統領と仲が悪いのは得策ではないことを学んだということだと思います。
「敵の敵は味方」
そんなアメリカの大手企業の中でも、今回のトランプ氏の勝利から最も恩恵を受けそうなのがイーロン・マスク氏です。 マスク氏はここ数カ月、選挙で激戦州のペンシルベニア州での対話集会や、ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンでトランプ氏をサポートする演説を行うなどトランプ氏にとって最も強力な支援者でした。マスク氏は、今回の大統領選挙キャンペーンで個人的に300億円程度の資金を提供したとも言われています。 トランプ氏にとってマスク氏は今回の選挙の大切な恩人となりました。 では、なぜ彼がトランプ氏をここまで強烈に応援したかというと、バイデン政権下の監督庁が、マスク氏のスペースXなどの規制を強化してきたという背景があります。バイデン氏はマスク氏を嫌っていたように見えました。 大統領時代のトランプ氏とマスク氏との関係は、協力と対立が交錯する複雑なものであっと言います。そこに、バイデン大統領というより強力な敵が現れたことで、マスク氏はバイデン氏に対抗するトランプ氏に近づきました。「敵の敵は味方」という非常に分かりやすい構図と言えます。 *** この記事の後編では引き続き、今回の選挙でイーロン・マスク氏が得たリターンや、テスラ以外に「トランプ2.0」の恩恵を受けそうな企業の「実名」について、マネックス証券の岡元兵八郎氏の解説をお届けする。 岡元兵八郎 マネックス証券の専門役員。専門である外国株のチーフ・外国株コンサルタントのほか、マネックス・ユニバーシティ投資教育機関のシニアフェローも務める。元Citigroup/米ソロモンブラザーズ証券のマネージング・ディレクター。外国株に30年以上携わるプロフェッショナルで、関わった海外の株式市場は世界54カ国を数える。海外訪問国は80カ国を超える。米国株はもちろんのこと、新興国の株式事情にも精通している。ニックネームは「ハッチ」。Xアカウント名 @heihachiro888 デイリー新潮編集部
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