「百貨店閉店でにぎわいが消えた」キャンペーンに、新聞が“チカラ”を入れる理由
「にぎわいが消えた」はずが……
国宝・松江城や塩見縄手などの観光スポットが多いこのエリアに、もともと1981年にオープンした「アピア」という大型SCがあった。それが2006年に「キャスパル」となって再オープンし、長年愛されてきたが建物の老朽化などで2021年に閉店してしまった。 しかし、その跡地にこの5月27日、ナチュラルガーデン黒田の核となる24時間営業のスーパーマーケット「マルイ」がオープンした。ちなみに、この施設には今後、無印良品や松江市の老舗和菓子店などのテナントが出店を予定している。 『山陰中央テレビ』のニュース映像を見ると、オープン前には長蛇の列ができていた。このあたりはスーパー激戦区ということで、成城石井や三越伊勢丹などのブランド商品も扱って「商品力」で勝負をしていくという。 人口減少によって松江市の「にぎわい」は消えている。しかし、そんな厳しい状況の中でも、住民のニーズや時代のトレンドにマッチした新しいSCによって、どうにか新しい「にぎわい」を生み出そうと努力しているのだ。 しかし、『南日本新聞』の記事ではこういう情報は紹介せず、「百貨店閉店でにぎわいが消えた」というストーリーに固執している印象を受ける。もちろん、「山形屋再建」がテーマで取材に来ているのだから気持ちはよく分かるが、あまりにも「百貨店」に肩入れしすぎではないか。埼玉・丸広百貨店閉店を扱う『朝日新聞』もやたらと「百貨店閉店=地域にマイナス」を強調している。 では、なぜ新聞社はこうも百貨店に優しいのか。 いろいろな意見があるだろうが、個人的には、自分たちの姿と百貨店業界の衰退を重ね、感情移入をしているからではないかと考えている。
百貨店よりも厳しい新聞業界
なぜ筆者がそう思うのかというと、記者さんが生きている世界がまさしく同じだからだ。 ご存じのように、新聞は斜陽産業で、厳しい人たちからは「消えていく」とまで言われている。日本新聞協会によれば、2000年の新聞の発行部数は約5371万部だったのが、現在は約2860万部だ。2000年比53%まで激減している。20年で需要が半分に落ち込む産業などある意味、百貨店よりも厳しい。 ただ、これも百貨店と同様で、もともと日本は新聞社が異常なほど多すぎた。先進国で、1000万部とか800万部なんて全国新聞は存在しない。ネットやSNSの発達うんぬん以前に過剰供給だったのだ。 だが、多くの新聞人はそういう事実を受け入れることなく、必死に「新聞はこの社会にとって必要不可欠だ」と訴える。いわく、「ネットメディアと異なる良質な報道」「新聞が消えたらフェイクニュースだらけだ」とかなんとか、新聞社の数が減ったら日本が滅びるみたいな話をしている。 ただ、これも「百貨店閉店でにぎわいが消えた」キャンペーンと同じく、根拠のない恐怖をあおるミスリードだ。今の日本の人口規模なら新聞はもっと減ったところで、国民に特に大きな不利益はない。 企業や政治家・有名人の不正をあぶり出しているのが、ほとんど週刊誌や暴露系インフルエンサーだという動かし難い事実がある。 ネットメディアや週刊誌はうそばかりだというが、世の中で話題になるのはもはや週刊誌や暴露系インフルエンサーが発信源だ。ちょっと前まで岸田政権を苦しめていた裏金問題を突き止めたのも『しんぶん赤旗』で、日本共産党中央委員会が発行するゴリゴリの政党機関紙だ。日本新聞協会にさえ加盟していない。