【マイルCS みどころ】秋の淀を熱くする精鋭たち 連覇を狙うナミュールかブレイディヴェーグがマイル女王に輝くか それとも…
第41回マイルCS みどころ
「牝馬が強くなった」―― ここ数年の日本競馬を見ていると、そうした感想を抱く方も少なくないだろう。マイルCSひとつとっても、直近5年で牝馬は延べ13頭が挑んで3勝3着1回と牡馬以上の好成績を残している。 【予想配信】下半期ベストマイラー決定戦「マイルCS」をガチ予想!キャプテン渡辺の自腹で目指せ100万円! 思えば4年前の2020年。安田記念、スプリンターズSで牡馬を制圧したグランアレグリアが外から弾けるような末脚を見せて前年の勝ち馬インディチャンプを交わして勝利。真の短距離女王の座へと駆け上がった。 翌2021年、引退レースとしてここを選んだグランアレグリアは上がり3ハロンで自己最速となる32秒7という爆発的なキレ味を見せて牝馬としては史上初となるマイルCS連覇を達成して、有終の美を飾った。 そんな強い牝馬の歴史に名を連ねることが期待されているのが……史上7頭目の連覇を狙うナミュールだ。 2歳秋にデビューすると、切れる末脚を武器に軽々と2連勝。阪神JFでは1番人気に推されたが、出遅れが響いて4着止まり。 横山武史とタッグを組んだ3歳時はチューリップ賞こそ勝利したが、桜花賞はまさかの10着大敗。オークス3着、秋華賞2着とここ一番で勝ち切れなかった。 その傾向は4歳になっても変わらず、2番人気に推されたヴィクトリアマイルでも7着に終わるなど本来の実力とは程遠い結果ばかりに終わっていた。 ところが昨秋、ナミュールは突如として目を覚ます。ジョアン・モレイラとタッグを組んで臨んだ富士Sでは中団から切れ味を生かすというこの馬らしい勝ちっぷりで1年7ヵ月ぶりの白星を掴む。 続くマイルCSでは騎乗予定だったライアン・ムーアが落馬負傷で藤岡康太が代打騎乗することに。 突然のアクシデントがあったとはいえ、ナミュールと藤岡康太は息のピッタリ合った走りを見せ4角15番手から上がり3ハロン33秒0という素晴らしい末脚を見せて勝利。マイル女王との若手のホープのコンビはこのままずっと続くと思われた。 しかし、今年の春に藤岡康太は不慮の事故でその生涯を閉じ、競馬界に大きな悲しみが残った。 ナミュールも少なからず動揺したのか、藤岡康太の訃報の後に行われたヴィクトリアマイルでは2番人気に支持されるも出遅れて8着に大敗したが、続く安田記念では自己ベストとなる上がり3ハロン32秒9という時計を叩き出して2着に入るという意地を見せた。 あれから1年。ナミュールは前年の覇者として挑戦を受けて立つ立場になった。春のドバイターフで2着に入った時の鞍上、クリスチャン・デムーロとのコンビで連覇を達成し、藤岡康太に捧げる勝利を挙げることはできるだろうか。 昨年のナミュールがそうだったように、マイルの王座は突如として現れた新鋭がかっさらうこともしばしばある。昨年のエリザベス女王杯勝ち馬、ブレイディヴェーグがマイル女王のタイトルを狙ってやってきた。 デビュー戦直後、そして初勝利を挙げた直後と2度の骨折に見舞われたことでクラシック戦線を棒に振った才女はローズSをステップに古馬相手のエリザベス女王杯に果敢に挑戦。 並み居る実績馬を相手にしても1番人気に支持されるという高い期待を寄せられたが、インコースを5番手で追走して、直線で外に出して抜け出すという優等生なレース運びを見せて快勝。キャリア5戦にして女王の座をつかみ取った。 真の女王を目指して迎えた今年。ブレイディヴェーグはドバイターフを飛節の腫れを理由に回避し、そして復帰戦として予定していた新潟記念も筋肉痛のために回避。 またも体質の弱さに悩まされることになったが、11ヵ月ぶりとなった復帰戦、府中牝馬Sでは6戦目にして初めて出遅れることなく後方で脚を溜めることができ、最後の直線で外に持ち出されると、上がり3ハロン32秒8という抜群の切れ味を見せて快勝。女王の存在感をまざまざと魅せる形になった。 連覇が懸かるエリザベス女王杯ではなく、重賞では初となる牡馬を相手にしたマイルCSを矛先に向けるという大きなチャレンジを選んだ今回。ブレイディヴェーグがどんなレースを見せるか楽しみでならない。 そんな牝馬2頭にとって最大のライバルとなりそうなのが欧州最強マイラー、チャリンだ。 3歳時はロイヤルアスコット開催のマイルGⅠ、セントジェームスパレスSで3着に入ったことがある程度の凡庸な馬だったが、4歳になった今年に本格化。 ドンカスターマイルS、bet365マイルSを連勝すると、ロッキンジSで2着。その後、ロイヤルアスコット開催のクイーンアンSでは中団から鋭い末脚を繰り出して念願のGI制覇を果たすと、続くフランスのマイルGⅠ、ジャック・ル・マロワ賞を快勝。 この時の勝ち時計は今世紀に入ってから3番目に速く、両馬場でのスピード勝負にも対応できることを示してみせた。 秋になってもチャリンの勢いは止まらず。ムーラン・ド・ロンシャン賞では逃げ馬を捕まえられずに2着に敗れたが、10月のクイーンエリザベスⅡ世Sでは先行策から流れに乗って押し切るという王道のレース運びで今年のドバイターフでナミュールを負かしたファクトゥールシュヴァルに2馬身差を付けて勝利。これでマイルGⅠ3勝目を挙げた。 マイルCSに外国馬が参戦するのは2011年以来、13年ぶり。これまで延べ11頭が挑んで3着が2度のみと苦戦を強いられてはいるが、今年に入ってからの成長度は目を見張るものがある。日本競馬界を震撼させるような走りを見せることができるだろうか。 強い牝馬が突き抜けるか、それとも欧州からの刺客が押し切るか、それとも牡馬が意地を見せるか――今年の秋も淀のターフが熱く燃えることになりそうだ。 ■文/福嶌弘
テレ東スポーツ