コロナ禍はパラダイムシフトの契機か 「中央集権型の工業社会」から「地方分権型の生命社会」へ
政府は4月16日、東京など最初に緊急事態宣言の対象とした7都府県以外にも感染が広がっているとして、宣言の対象地域を全国に拡大しました。宣言後は都道府県知事が緊急事態措置を講じる仕組みのため、各知事の手腕に注目が集まっています。 建築家で、文化論に関する多数の著書で知られる名古屋工業大学名誉教授・若山滋氏も「国よりも地方自治体が主役になっている」と話します。そして、今が日本社会が変わる契機になるかもしれない、と考えます。若山氏が独自の視点で論じます。
新型コロナとの闘いは国より自治体が主役
自分が住んでいる自治体をこれほど実感したことはない。新型コロナウイルスに対する闘いは、国よりも地方自治体が主役となっているようだ。 まず精彩を放ったのは、東京都の小池百合子知事の動きの速さである。オリンピック問題では矢面に立つことを避けていたようだが、延期が決まるやいなや、ロックダウンという言葉で先手を取り、国に緊急事態宣言の決断を迫りながら、都独自に営業停止を要請し、補償政策を打ち出している。元キャスターだけに発信力は抜群である。「選挙目当て」という批判もあるが、選挙を考えない政治家はいない。都民も国民も、しっかりした政策によってこの難局を乗り切ってくれれば、何目当てだろうとかまわないのだ。 また北海道の鈴木直道知事は、いち早く独自の緊急事態宣言を出して道内を引き締めた。大阪府の吉村洋文知事は、「#吉村寝ろ」がSNSでトレンド入りするほど多忙な仕事ぶりを見せている。その他にも、住民の命と生活を守るために、独自の補償策を打ち出す首長が出てきている。 一方、安倍首相の言葉には力強さが感じられない。「日本式」とされる「クラスター対策」の専門家は頑張ってくれてはいるが、もはや現実に追いつかなくなっているように感じる。ようやく出した感のある緊急事態宣言も強制力のない自粛要請に過ぎず、休業補償はなく、給付金は二転三転である。菅官房長官との不仲なども漏れ伝わり、どうも首相の姿に孤独の影が漂っている。