伝説の音楽番組『Austin City Limits』50年の歴史に触れる【オースティン音楽旅行記Vol.4】
ウィリー・ネルソンと共に歩んできた歴史
長年収録に使われてきたのは、テキサス大学のキャンパス内にあった小さな一室。観客数は300人に制限されていたが、その親密さが特別なパフォーマンスを生み出してきた。そこから2011年、市中心部の「ACL Live at The Moody Theater」にスタジオを移してからは、ライブ事業がACLの新たな柱となる。2750人収容と規模感を拡張しつつ、持ち味である距離感の近さはキープ。収録のない日は世界トップクラスのライブ会場として日々使われており、最近では新しい学校のリーダーズが出演したばかりだ。 ここでは事前予約制の見学ツアーも実施されており、ACLの歴史や番組制作の過程、ステージの裏側を知ることができる。今回はACLのブランド開発部長、Ed Baileyさんに案内してもらった。 まずはEdさんと、The Moody Theaterの入り口にあるウィリー・ネルソン像で合流する。ウィリーとACLは蜜月の関係にあり、記念すべき第1回を皮切りに歴代最多18回も出演し、2024年10月には番組の50周年記念コンサートに登場したばかり。押しも押されぬ番組成功の立役者であり、ウィリーが街のシンボルとなった大きな理由がここにある。 もともとACLの出発点は、1974年当時のオースティンで活況を呈した、「プログレッシブ・カントリー」の本質を伝えることにあった。そのために制作陣は、ライブハウスの現場でうごめく興奮を収めるべく、生演奏を1時間丸ごと放送するという大胆なアイディアで勝負に挑む。 ウィリーはこの頃すでに新しいムーブメントを象徴する存在だった。彼とバンドの熱演に客席は大いに沸き、番組から伝わるリアルな熱狂と音楽愛は、視聴者だけでなくミュージシャンをも惹きつけていく。その後もルーツミュージック色を今日まで続く伝統として受け継ぎつつ、1979年にトム・ウェイツ、1980年にレイ・チャールズを迎えるなど、様々なジャンルに開かれた番組へと少しずつ変化していった。