致死率20%の「人食いバクテリア」感染が倍増、何が起きているのか、米フロリダ州
被害を回避するには
気候変動によるビブリオ属菌の増加は水産業にも影響を及ぼしている。ティラピアや小エビの養殖場は、ビブリオ属菌の大発生により特に大きな打撃を受けている。2019年2月に学術誌「mBio」に発表された論文は、ビブリオ・バルニフィカスを「世界の水産養殖における新たな問題」と表現している。 アルマグロ・モレノ氏は、一部の水産養殖場ではビブリオ属菌の集団感染により80%の魚介類が死亡したと報告している。まれではあるが、アラスカ産のカキもビブリオ属菌への感染が報告されたことがある。 昔は「月名にRが含まれない月(5月から8月まで)には生ガキを食べてはいけない」と言われていたが、米国東海岸で、海水温が高く、ビブリオ属菌が繁殖できる状態が秋まで続くようになった今では、5月から8月までを避けるだけでは不十分かもしれない。 実際、米国では毎年、汚染されたシーフードの摂取によるビブリオ属菌感染症(ビブリオ症)が毎年5万件以上発生している。細菌の増加に伴い、この数がさらに増えるのはほぼ確実だ。アルマグロ・モレノ氏は、(米国南部でメキシコ湾に面する)ニューオーリンズの食文化に倣い、ハマグリやカキは生で食べずにフライやグリルにすることを提案している。 CDCは、各州の公衆衛生当局から症例に関する情報を集めており、集団感染が起きた際の感染源の追跡に役立つ。このデータは不完全で、ビブリオ症のほとんどの症例は報告されず、毎年集計が発表されるわけでもないが、感染が内陸部に拡大していることは示されている。 2012年に米国で報告されたビブリオ症の症例のほとんどが大西洋沿岸とメキシコ湾岸の州からで、非沿岸部の州の割合は16%だったが、2019年には26%に増えている。汚染された魚介類が持ち込まれたことが原因ではないかと考えられている。 気候変動による海水温の上昇と感染症の増加が続いている今、ビブリオ属菌がいる可能性が高い水路の監視体制を強化することがますます重要になる。なぜなら、目を凝らしても、水中に細菌がいるかどうかはわからないからだ。 「ビブリオ属菌は海洋細菌です」とモニルザマン氏は言う。「彼らは美しく澄んでいる水の中でも繁殖するのです」
文=Meryl Davids Landau/訳=三枝小夜子