ザトウクジラ、うっかり1万3000キロを旅してしまう(YOUは何しにアフリカへ?)
その目的とは?
研究チームは論文で 「ここまでの長距離移動は特異な例であると思われ、何が要因なのかという疑問が生じます。繁殖に関連している可能性もありますが、必ずしもそれに限定されるわけではありません」 と述べています。つまり、この個体は繁殖のためだけに三大洋をまたぐ旅に出た可能性も、なきにしもあらずということ。 研究チームは「この普通ではない生息地探しの背景には、地球規模の気候変動や、環境条件と事象の変化が考えられます」と述べ、南大洋におけるクジラのエサであるオキアミの分布の変動も関係している可能性があると付け加えています。 また、ザトウクジラの個体数増加によって、繁殖パートナー探しや資源をめぐる競争が激化したことで、通常の回遊ルートから離れた場所でエサや繁殖地を求めるようになったのではないかと推測しています。 研究チームは、「ザトウクジラの行動生態学に関する現在のデータは限られているため、繁殖地を変えた正確な原因や原動力は推測するしかありません」と認めつつも、この記録的な回遊はザトウクジラの行動の柔軟性を示すものであり、それが環境変化への適応を助けている可能性や、そのような圧力に対して進化しようとする様子を反映している可能性があると付け加えています。
市民科学のパワー
研究者たちは、ホエールウォッチャーがクジラの目撃写真をアップロードできるHappywhaleというウェブサイトにあった写真のおかげで、今回のザトウクジラによる記録破りの旅を特定できました。同サイトでは、自動画像認識ソフトウエアを使用して、尾びれの独特なパターンからクジラを識別しているといいます。市民科学者と科学者のコラボで明らかになったザトウクジラの知られていなかった生態。市民もまた、科学を進歩させているんですよね。 この研究は、複雑な海洋生物の驚くような行動に光を当て、最終的にはザトウクジラと海洋生態系に関する新たな知見をもたらすかもしれません。
Kenji P. Miyajima