ほとんど死刑宣告!監査法人が上場企業に突きつけた「たった5文字」の烙印とは?
サンテックの担当者たちは、追加の資料を提出したり、説明を補足したりと対応に追われた。しかし、内部統制の脆弱性も相まって、YTN工事の原価見積りの甘さなどについて発覚が遅れ、十分な時間を確保できず、必要な情報を準備できなかったのだ。 RSM清和監査法人は、サンテック側からの納得のいく回答が得られない項目については、会計・監査の専門家として厳しく追及を続けた。 一方、サンテックは、以前の東邦監査法人とのギャップに苦しんでいた。 長年、監査法人側が「何とかしてくれる」状況にあったサンテック。監査法人との関係性がこれまでと大きく変わった中、「聞いても教えてくれない」とRSM清和監査法人に不満を感じていた。 RSM清和監査法人としても、「会計基準や新しい情報を自分で得ようとしないし理解もしていない」とサンテック側への不信感を募らせていった。 最終的には、監査法人と経理担当者の対立が激化。会社の監査役や内部監査室の担当者が間に入って、監査対応を進めるという異常事態になってしまった。 そして、ついに、RSM清和監査法人は、サンテックの決算書に対して「意見不表明」を突き付けた。 彼らは、監査報告書の中で、「YTN工事の費用見積りの根拠が不十分であることなど、いくつかの項目について、十分な監査証拠を入手できなかったため、意見を表明することができない」と述べた。 つまり、RSM清和監査法人は、サンテックの決算書が会社の財政状態や経営成績などを正しく反映しているかどうかについて、判断を下せなかったのだ。
● 「意見不表明」は避けられなかったのか? 事の重大さを分かっていなかったサンテック 「意見不表明」という最悪な結末を迎えてしまったサンテックとRSM清和監査法人。 両社の激しい対立が招いた結果だが、それでもこの最悪の結果である意見不表明を回避できたチャンスはあったはずだ。 例えば、2024年3月期の有価証券報告書の提出を延期すれば、監査の時間を延長することができた。その間にサンテックが説明資料などを用意すれば、意見不表明を回避できる十分な証拠がそろったかもしれない。 実際、RSM清和監査法人は、このままでは意見不表明となってしまうため、サンテック側に有価証券報告書の延期を勧めたという。しかし、サンテックはそれを拒否して、意見不表明を受け入れたのだ。 前述の通り、意見不表明は企業の信用度にもかかわり、最悪の場合、上場廃止のリスクもある。 しかし、サンテック側には意見不表明の重大さを認知している者がほとんどおらず、しまいには、株主総会招集通知の印刷を急かされているし、「配当を待っている株主が大勢いる」(調査報告書より)から早く決算書を出したいという理由で、意見不表明を受け入れたのだ。 結果、サンテックの2024年3月期の決算書には意見不表明が出され、当然ながら、RSM清和監査法人は1年でサンテックの監査人を降りることとなった。 翌年度である25年3月期には、第1四半期の決算をチェックしてくれる監査法人がなかなか見つからず、第1四半期の決算短信は期日通りに提出できなかった(その後、一時会計監査人が選ばれた)。 このニュースは、サンテックにとって大きな痛手となった。長年築き上げてきた信頼が、一瞬にして崩れ去ってしまったのだ。