ほとんど死刑宣告!監査法人が上場企業に突きつけた「たった5文字」の烙印とは?
会社と一緒に監査を乗り切る、いわゆる「伴走型の監査」が長きにわたって行われてきたということだ。 しかし、“伴走型”といえば聞こえはいいが、会計監査を行う際の「甘やかし」につながりかねない。そして今回、こうした関係性が長年続いていたことが、結果的に悲劇を招く一因となったのだ。 サンテックの担当者たちは、東邦監査法人の監査チームに全幅の信頼を置き、何かトラブルが起こったとしても「監査法人が何とかしてくれる」といった受け身の姿勢が、社内に蔓延していた。 しかし、状況が変わる。 2024年3月期、サンテックは、監査法人を東邦監査法人からRSM清和監査法人に変更することにした。サンテックは今後、海外展開に力を入れようと考えていたが、その場合、海外にリソースがない東邦監査法人では監査が対応できないためだ。 RSM清和監査法人は海外の会計事務所ファームと提携しているため、サンテックが海外展開した場合でも、海外のネットワークを使って、監査が可能となる。 こうして、40年以上付き合ってきた東邦監査法人との関係に終止符を打ち、RSM清和監査法人に監査人を交代した。
● 新監査法人は徹底的に決算をチェック 根拠資料を求められたサンテックは… RSM清和監査法人の監査チームは、サンテックの決算書をくまなくチェックし始めた。 彼らは、過去の監査結果やサンテックの事業内容を詳しく調べ、疑問点があれば徹底的に質問を繰り返した。具体的には、サンテックの財務諸表の各項目についてその根拠となる資料を要求したり、担当者に直接インタビューを行ったりした。 そんな中、RSM清和監査法人は、ある大型工事の費用に疑問を抱いた。それは、「YTN工事」と呼ばれる、難しいノウハウが必要な工事だった。 サンテックにとっても、あまり経験のない工事であり、工事費用の原価見積りは容易ではなかった。担当者は、過去の類似工事のデータなどを参考にしながら、なんとか原価見積りを作成したものの、正確な数字を出すのは難しかった(後々、このYTN工事は実は赤字工事だったことが発覚した)。 RSM清和監査法人は、サンテックに「YTN工事の費用、本当にこれで合っているんですか? 根拠となる資料を見せてください」と要求。これに対してサンテック側は、現場担当者の経験値によると説明したが、客観的な証拠としては不十分だった。 実務ではしばしば、担当者の勘による見積りが必要になることもあるが、その場合は、それを客観的なデータなどと結びつけて理論立てて、正当性を主張するという対応が、経理担当者には求められる。 しかし、サンテックはこれができなかった。 なぜなら、今までそんなことは必要なかったからだ。40年以上付き合いのあった東邦監査法人がやってくれていたから……。 ● 「教えてくれない」「理解していない」 サンテックと監査法人、深まる溝 企業と監査法人は、決算書の作成者(企業)と、それを独立した第三者の立場でチェックする者(監査法人)という関係であるべきだ。 監査法人としては、会社の主張を鵜呑みにするのではなく、その裏付けとなる証拠をきちんと確認する必要がある。当然ながら、RSM清和監査法人は監査基準に基づき、厳格な姿勢で監査を進めていた。 RSM清和監査法人は、YTN工事以外にも、いくつかの項目について疑問を呈した。例えば、海外の同様の工事に係る工事原価の見積りや、将来発生する可能性のある損失の見積りなど、会計処理の判断が難しい項目について、詳細な説明を求めた。