“巨人軍”出身の「ドジャース番記者」が見たワールドシリーズ 「山本由伸投手はサイ・ヤング賞を獲れると確信しています」
第1回【プロ野球選手が選んだ第二の人生は「ドジャースの番記者」 最大の転機は「日本のエース」のメジャー挑戦だった】からの続き──。「MLB担当記者」としてドジャースの取材を続ける鈴木優さんは、もちろん大谷翔平選手や山本由伸投手を間近で見る機会がある(全2回の第2回)。 【写真21枚】プロ野球を引退し、現在はMLB記者として大谷翔平の近況をリポートする鈴木さん。妻子との3ショットは何とも幸せそうだ ***
特に鈴木さんは自身がピッチャーとしてオリックスと巨人の2チームに所属した経験を持つ。そのため山本由伸投手はチームメイトだった。オリックスの入団は鈴木さんが早くて2015年、山本投手は2017年という具合だ。 プロ野球を引退した鈴木さんが記者として山本さんを見つめ、後輩の山本投手はドジャーススタジアムのマウンドに立つ。まさに奇縁だろう。 ご存知の通り、山本投手は日本を代表するエースだった。プロ野球の通算成績は70勝29敗、防御率は1・82と素晴らしい数字を残している。 ところがドジャースのレギュラーシーズンでは7勝2敗、防御率は3・00。勝ち星が少ないのは右肩けん板損傷のケガで戦列を離れたのが原因だから仕方ないとして、防御率の悪化は気になる。 さらに注目度の高い試合でKOされたことも、「山本投手は本当にメジャーで通用するのか?」という議論を巻き起こした。 例えば韓国で3月に行われた開幕戦だ。対パドレス3連戦で山本投手は第2戦に先発したが、1回5失点でKOされてしまった。さらにポストシーズンの“デビュー戦”となった10月5日の対パドレス戦でも3回5失点でマウンドを降りた。どちらもオリックス時代の山本投手なら想像できない投球内容だった。
ドジャースで苦しむ理由
「しかし山本投手は、10月11日の対パドレス戦では5回無失点、17日のメッツ戦では5回の途中で2失点と、大事なポストシーズンで素晴らしいピッチングを見せました。これで不安の声を吹き飛ばし、チームにとって必要不可欠な投手として認められたのです。実際、私は山本投手ならサイヤング賞を獲れると確信しています。オリックス時代のピッチングと比較すると、『物足りない』と思う野球ファンもいるかもしれません。これはメジャーの野球レベルが非常に高いことが原因なのです」(鈴木さん) 鈴木さんが注目するのは、山本投手のストレートだ。日本のプロ野球ではストレートを効果的に使ってカウントを稼ぎ、多彩な変化球で打線を沈黙させてきた。 「少しぐらい甘いところにストレートが走っても、プロ野球のバッターは山本投手の球威でファウルになることが多かったのです。ところがメジャーのバッターはパワーがありますから、甘いストレートは軽々と長打にしてしまいます。しかも1番から9番までホームランを打てますから、山本投手は全く気が抜けません。その結果、生まれる厳しいプレッシャーが日本よりも防御率が上がる要因なのかなと思います」(同・鈴木さん) ただし、ポストシーズンではパドレス戦でリベンジを果たし、メッツ戦でも好投したことからも分かる通り、山本投手はメジャーの野球に“キャッチアップ”を続けている。