“巨人軍”出身の「ドジャース番記者」が見たワールドシリーズ 「山本由伸投手はサイ・ヤング賞を獲れると確信しています」
「サヨナラホームランを打ったら凄いよね」
一方の大谷選手は、多くのメディアが何度も繰り返して使った表現だが、「まるでマンガのような」活躍に終始した1年となった。 「開幕前、私は『大谷選手にとって今季はリハビリの年』とか『まずはチームに溶け込むことが最優先』と考えていました。ところがレギュラーシーズンが終わると54-59ですからね。最も驚いたのが、40-40を達成した8月23日の対レイズ戦です。9回に2アウト満塁のチャンスで打席に立った時、記者室で『これでサヨナラホームランを打ったら凄いよね』と仲間の記者たちと話していたら、その通りになりました。『まさか本当に打ったのか!?』、『マジで打ったのか!?』、『ここでホームランを打てるのか!?』と頭の中が渦を巻きました。これを形容するには『マンガのような』という言葉しかないと思います」 日々、記者としてドジャースを取材している鈴木さんは、大谷選手の活躍と人気を、少し違う角度で考えることもあるという。 「大谷選手の活躍を記者として取材するわけですが、とにかく人気のレベルが桁違いだと痛感させられます。何しろ世界的な大企業がCMの契約をドジャースに打診し、私たち記者の目の前でどんどん大型の契約が結ばれていきます。大谷選手は10年総額7億ドル、日本円で1000億円を超える大型契約で話題を呼びましたが、多くの企業からCM契約が申し込まれるのを見ていると、今季だけで元を取ったんじゃないかと思います。世界的なスーパースターは、野球の枠を超えて強い影響力を発揮することがよく分かりました」
都立高の貴重な経験
アメリカでは野球経験者が記者に転身したり、テレビなどで実況のアナウンサーを担当したりすることは珍しくない。鈴木さんが「MLB記者」としてレポートを担当しているのも、プロ野球選手だった経験を評価された結果だ。しかし出身高校である都立雪谷高校の日々も、大きな影響を与えたという。 「雪谷高校は赤点を取ると、一定期間、部活が禁止されます。勉強と部活の両立も求められるので練習は午後5時半までです。『練習が終わったらジムに行くのか、それとも勉強するのか』という問題は、自分の体調や練習の量、勉強の進度などを総合的に判断して、放課後に何をするかを自分で決める必要があります。高校の3年間で野球と勉強の両立を果たせたのは、自分の頭でしっかりと考え続けたからだと思います。この『自分の頭でしっかりと考える』という経験が今、ドジャースの取材でも非常に役立っている気がします」 第1回【プロ野球選手が選んだ第二の人生は「ドジャースの番記者」 最大の転機は「日本のエース」のメジャー挑戦だった】では、プロ野球を引退後、どういう縁からMLBの記者としてロスで働くようになったのか、その意外な経緯について詳細に報じている──。 デイリー新潮編集部
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