出版業界、3割超が赤字の低迷続く…有名雑誌が相次ぎ休刊、独自の“返本制度”も影響と指摘=TDB
出版業界の低迷が続いている。帝国データバンク(TDB)の調査によれば、2023年度における出版社の業績は厳しさを増し、赤字企業の割合が36.2%に達した。そして、2024年1月から8月にかけての出版社の倒産および廃業件数は、前年と同等のペースで推移しており、このまま推移すれば2024年通年では過去5年間で最多となる可能性が高いという。 【画像】過去年度における倒産件数の推移(参考) この状況は、長引く出版不況に加え、近年の社会経済情勢の変化が重なった結果といえる。特に2024年に入ってからは、著名な雑誌の休刊や廃刊が相次いでおり、業界に衝撃を与えている。月刊芸能誌『ポポロ』や女性ファッション誌『JELLY』、そしてアニメ分野からは、アニメ声優誌『声優アニメディア』などが休刊を発表した。 出版社の直面する課題は多岐にわたるとTDBは指摘。読者層の高齢化や若年層の電子書籍への移行、ネット専業メディアの台頭により、紙媒体の売上は1996年をピークに下降の一途をたどっている。加えて、出版物の約4割が売れ残りとして返品される「再販制度」や昨今の物価高騰に伴う印刷・物流コストの上昇も、出版社の収益を圧迫している。 こうした状況下、業界では生き残りをかけた取り組みも見られる。大手書店による返本削減の試みや、特色ある編集スタイルで業績を伸ばす雑誌の存在など、明るい兆しもないわけではない。しかし、ヒット作の創出が困難な現状では、特に中小出版社にとって経営の舵取りは一層厳しさを増している。 株式会社帝国データバンクは、この状況について「出版業界は構造的な転換期を迎えています。従来のビジネスモデルの見直しと、デジタル化への適応が急務となっているのです」と分析している。
編集部 経済・社会担当