なぜヤクルト村上の3打席連続本塁打が生まれたのか…虎の配球ミスを見逃さない“読みの力”と4番のプライド
ヤクルトの村上宗隆(22)が7月31日、甲子園球場で行われた阪神戦でプロ初となる35号、36号ソロ、37号2ランの3打席連続本塁打を放ち、全4得点を1人で叩き出し、4-2の逆転勝利で連敗を「2」でストップさせた。3打席連続本塁打は今年5月27日にチームメイトの塩見泰隆が放って以来で、甲子園では史上8人目。村上の驚異的な3連発の背景に迫った。
浜風に負けなかったバース級の一発
野球は一人でもできるのか。村上の衝撃の3打席連続アーチに甲子園に衝撃が走った。7回の追撃ソロ、土壇場9回の同点ソロ、そして延長11回の勝ち越し2ランと全得点をそのバットで叩き出して2位からジワジワ迫ってきた虎の3タテを阻止した。 ヒーローインタビューは、もちろん、村上である。 「あまり実感が湧かないというか。今日の試合を取れたことが良かった」 コメントがまた驚きだが、打てば打つほど甲子園が静まり返ったのだから、ホームランの歓喜の実感はなかったのかもしれない。 1点差に迫る追撃の1本目は7回だった。 阪神ベンチは無失点好投のガンケルから変則左腕の渡邉にスイッチした。渡邉は、今季村上と4度対戦して3三振1四球。一発だけが怖い2点差の場面で、矢野監督が村上キラーに託した采配は理解できる。だが、一昨年まで阪神で7年間コーチを務めた高代延博氏は、「渡邉-梅野のバッテリーの配球が問題だった」と指摘した。 村上は、初球のインコース寄りのスライダーを見送ったが、2球目の外角スライダーを空振りした。カウント0-2。高代氏は、「2球の反応を見る限り、村上は外角狙いで踏み込んでいた。ここで1球内角へつっこんでいくボールが必要だった。だが、そこを攻めることなく、3球目も外角スライダーがボールとなり、4球目にひとつストライクゾーンに入れたスライダーを狙われた。そして、この全球スライダー。しかも、この徹底した外角への配球が、村上に次の打席での配球を読ませることにつながった」という。 村上は4球目の外角スライダ―をフルスイング。まるで逆方向へ引っ張ったような打球は、ファウルになることなくレフトスタンドへ飛び込んだ。 実は、ガンケルは、4回二死一塁で村上を迎えて6球全球でインサイド攻めをした。結果は捕邪飛。村上からすれば「次は外」の読みがあり、その読みを混乱させ、踏み込みを躊躇させるためにも、もう一度、ここでインサイドを意識させるボールが必要だったわけだ。 そして1-2で迎えた9回。村上が阪神ベンチとファンの度肝を抜くことになる。