NTT法改正で「NTTが完全民営化」した場合、電話加入権(施設設置負担金)は返還される?
2023年、NTT法の廃止議論が自民党内で活発化したことをきっかけに「NTT法改正」及び「NTTの完全民営化」の議論が熱を帯びています。 【画像でわかる】過去に購入したNTTの「電話加入権」はいまどれくらいの価値があるのか? 2024年現在、NTTはいわば「半官半民」的な企業です。民間企業として上場している一方で、政府が一定割合の株を所有しており、NTT法に絡む様々な法的規制の対象企業でもあります。 そんなNTTが完全民営化した場合、多くの国民が気になるのが電話加入権(施設設置負担金)の行方ではないでしょうか? かつてNTTに対して高額な電話加入権の支払いをした方は多いでしょう。その電話加入権で集められたお金は、「半官半民」であるNTTの通信インフラの整備などに活用されました。 しかしNTTが完全に民間企業となった場合、民間企業が「半官半民」として国民から集めたお金で作ったインフラを引き継ぐ点に問題はないのでしょうか? 今回はNTT法改正などについて、詳しく見ていきましょう。
NTTの「完全民営化」の議論について
前述の通り、2024年現在、NTTは政府が株式の3分の1以上を保有する企業であり「半官半民」的な企業であると言えます。そんなNTTの完全民営化の議論が巻き起こった背景には、政府保有株式を売却して防衛費の増額のための財源を作ることがあると見られます。 つまりNTTの完全民営化の議論は『NTT法を時代に合った形へと法改正する必要はないか』『NTTを完全民営化して防衛費の財源を作れないか』という2つの議論が絡み合っており、非常にややこしいトピックであると言えます。「NTT法改正の必要性」を認めたとしても、NTTを完全民営化する必要があるかは別問題であるためです。 なおKDDI、ソフトバンクなどはNTT法の廃止に反対の立場を示しています。その背景にはNTTが電話加入権などを通じて集めた25兆円(当時)にものぼる費用で整備された、国内の通信インフラの存在があります。
KDDIやソフトバンクに代表される競合他社にとっては、NTTが整備した通信インフラはその背景を踏まえて考えても「国民共有の公的資産」です。事実としてNTTには法に基づき、光ファイバー貸し出し義務なども課せられています。 しかし、NTTが完全民営化した場合「競合他社に対する設備利用の公平さ」は失われる可能性が考えられます。またNTT法の外資規制が撤廃されると、重要な通信インフラが外国資本に売却される可能性もあり、安全保障上の問題があると指摘されています。