年間200万人がアルコール依存を治療―依存者にセカンドチャンス与える米国
すべて平等に分け隔てなく依存症をもたらす?
ところが、実は昔から米国で社会の各層に「分け隔てなく」依存症をもたらしてきたモノがあります。アルコールです。 米国で依存症といえばドラッグというイメージがどうしても先行しますが、アルコール依存症の方が実は圧倒的に多い。The Substance Abuse & Mental Health Services Administration (SAMHSA)の2014年調査によると、依存症を抱えた個人のほぼ80%が苦しんでいたのはアルコールでした。 National Survey on Drug Use and Health (NSDUH)の2015年度版は、18歳以上の米国人のうち1500万人がアルコール依存問題を抱えており、毎年約8万8000人が関連する理由で死亡しているとしています(出典:National Institute on Alcohol Abuse and Alcoholism)。 また、SAMHSAの2012年の調査によると、米国の子どもの10%超がアルコール問題を抱える親と同居しているそうです。そして、最新版である2016年調査は、アルコール依存症の治療を受けた人の数を200万人としており、くだんの処方箋鎮痛剤のそれは69万2000人なので、その差は歴然です。 数が多い理由はおそらく日本と同じ……アルコールが合法だから。ドラッグと違って常に日常の中にあるお酒に依存するようになる確率は、当然誰にとってもより高く、実際、家族や友人がアルコール依存症である、あるいは“だった”というストーリーを持っている人が筆者の周囲にもたくさんいます。 筆者の夫の曽祖父は、まだ少年だった禁酒法時代にアル・カポネの下でお酒の運び屋をやっていた、という経歴の持ち主ですが、子ども時代からの飲酒習慣をきっぱりやめてから10数年がたったある暑い日に、奥さんの「ビールを一杯飲みたい気分ね」の一言がきっかけで飲んだが最後、死ぬまで「アル中」だったと親族内で語り継がれています。 夫の幼なじみは昨年、長きにわたる過度の飲酒で肝臓を悪くしていたものの、度重なる断酒の失敗で最終的には肝移植のウエイティングリストから外されてしまい、そのまま帰らぬ人となりました。