「2ストライクと追い込んでから3球目を打たれることが多かった。特に3球以内のスライダー系。ピッチングの間とボール球をうまく使いたい」と、阪神戦の投球をテーマづけしていた。 　阪神は、過去2試合のデータの裏をかかれた上に、そのスピードガン表示以上に伸びてくる質の高いストレートについていけず、しかもボール球を振った。 　1回二死三塁の先制機に4番の大山はボール球のチェンジアップをひっかけて三塁ゴロ。4回二死一、三塁のチャンスでも7番に抜擢された豊田は高めのボールのストレートを振らされて三振している。 　ストレートに差し込まれ、ことごとくボール球を振った。つまりボールの見極めができない。これは阪神打線の慢性的とも言える弱点。そこを突かれた。 　では、どうすれば打撃不振を脱却できるのか。 　巨人、楽天、西武で参謀を務め、現在新潟アルビレックスBC監督の橋上秀樹氏は、「ひとりひとりが打線の中での自分の役割を考え、チームとして“裏をかかれたらアウトでいい”と割り切るくらい狙い球を徹底していくしかない」という話をしていた。もし狙い球の徹底ができないのであれば、打撃スタッフの配置転換も考えねばならないだろう。 　打線の見直しも必要となる。 　2番の佐藤が孤立してしまっている状況。1番打者としては3割を打っていた近本が3番に入って打率.160。現在、13打席連続無安打で、8回には二死二塁で目の前で佐藤を申告敬遠され、エスコバーに完全にタイミングを外されての投手ゴロに終わっている。4番の大山も併殺打を含む4のゼロ。横浜DeNAの東が警戒していた足も使えていない。8回、延長10回と足のある走者を出しながらもベンチは動かなかった。 　そして、まだ先の長いペナントレースの戦いを見据え、個の能力を練習で高める努力を怠ってはならない。見送ればボールとなる高めの悪球をサヨナラ本塁打にしたソトとの違いは、個の能力差の典型と言える。 　エンゼルスの“二刀流スター”大谷翔平は、スポーツ雑誌「Number」の先月号で鋭い洞察と取材力で知られるスポーツライター石田雄太氏のインタビューに答え、追究している打撃を「どのカウントでも、どんな場面でも、ボール球は見送る、ストライクは振る、振ったらホームランを打つ……常にそこを求めて練習していかなくちゃ、とは考えています」と答えている。そして、ど真ん中を球種に限らずセンターへ打つのを理想とし、そのボールを見極める能力を高めるために必要なことがバットスイングの速さだという持論を展開している。 　今の阪神が求めねばならないのがそこなのだ。 　4月中の借金「15」は、故・中村勝広監督が率いて全日程最下位という屈辱に終わった1991年のワーストを超えて球団史上最速だという。この歴史的な開幕大不振からの脱出は、見えない努力の積み重ねしかない。（文責・論スポ、スポーツタイムズ通信社）