【CBC賞回顧】ドロップオブライトが重賞初V ピタリとハマった福永祐一調教師の戦略と幸英明騎手の好騎乗
父トーセンラーの成長力
思えば、先週の小倉記念はキングヘイロー産駒リフレーミングが勝ち、今週は福永祐一調教師がCBC賞を勝った。 中京といえば、キングヘイローにとってはGⅠ制覇を果たした地であり、福永祐一騎手が初騎乗初勝利をあげた競馬場でもある。26年前のクラシック三冠を戦い抜いたひとりのホースマンと、一頭の名馬。その物語が微かにつながっているような気もする。 ドロップオブライトの父トーセンラーは早期に重賞を勝ち、5歳秋のマイルCSでGⅠタイトルを獲得した。ディープインパクト産駒としては珍しい晩成型でもある。弟スピルバーグも若い頃はもどかしくも、5歳で天皇賞(秋)を制した。 ドロップオブライトの兄弟はプレシャスエース、テンテキセンセキなど活躍馬は短距離型ばかり。父の成長力と母系の距離適性を背景に、スプリント戦線で活躍してほしい。福永祐一調教師は早くも来年の高松宮記念を目標に、理想のローテーションを模索しているのではないか。
気がつけば“キングヘイロー馬券”
2着は3番人気スズハローム。抜群のスタートから下げて好位の後ろへ。スプリント戦特有の流れを避け、ひと溜め効かす作戦だったかもしれないが、結果的に溜めを効かせ過ぎたか。ドロップオブライトぐらいの位置に留めたかった。 だが、スプリント戦初出走のスズハロームに無理強いはできない。馬のリズムを整えながら走らせるには、好位の後ろが精一杯だったともとれる。もう少し流れてくれればといったところか。 選択肢が増える半面、今後の選択は難しくなった。ベストの1400mはGⅠがない。だが、中山芝1200mは忙しそうな予感もある。やはり、1400mに照準を絞ってもよさそうだ。 ちなみに、母の父ローレルゲレイロは2009年高松宮記念の勝ち馬。その父はキングヘイロー。キングヘイローに夢中になったものにとっては簡単な馬券だったか。 3着は先手を奪ったグランテスト。ピューロマジック回避で坂井瑠星騎手が一発を狙い、逃げの手にでた。まさに機を見るに敏。見事に策が当たり、前半600m33.6の絶妙なペースを演出した。 一方、ハンデ52kgでペースに恵まれながらも勝ち切ることができなかった。重賞を勝つにはもっと力をつけたいところだ。オープン特別で力を蓄え、再び重賞に挑戦してほしい。武器である先行力は発揮できた。現状、ベストは平坦コースだろう。 1番人気キタノエクスプレスは7着。前走1.07.0で走った反動もあったか。今回は少し位置が下がり、展開面で痛かった。溜めて伸びるタイプではなく、今後も先行策で上位を狙ってほしい。 ライタープロフィール 勝木 淳 競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースエキスパートを務める。『キタサンブラック伝説 王道を駆け抜けたみんなの愛馬』(星海社新書)に寄稿。
勝木淳