映画『十一人の賊軍』のコラボビール十一本を飲む(其の四)
②政のヴァイツェン
とろりとした感じでプラコップに注がれていくのを見た須藤さんが「濃厚!」。細かな泡が立ち上る姿には「藤棚の花のよう。花は下がり藤だけど、こちらは上り藤」と表現した。飲むとフルーティーさもあり、ウィート(小麦を使ったビール)らしさ満点だ。
「濃厚なところは、大作の主役を張るキャラそのものですね」。山田孝之演じる政は、鷲尾兵士郎と並ぶ映画の主役なのだ。「コップに入れたビールの泡が途切れないというのも、最後まで映画に出ている主役みたい」と須藤さん。
③おろしやのホワイトエール
政のヴァイツェンと同じく小麦麦芽を使用したビール。
「おろしや(ロシア)への密航を試みた罪でとらわれたので、おろしやと呼ばれているんですね。ホワイトエールにしたのは、ロシア系白人をイメージしてでしょうか」と須藤さん。一口飲んで「いいキレがある! 食中酒としてよさそう」。ベルジャン酵母と小麦麦芽が相乗効果を生んでいるビールといえる。須藤さんいわく「最初の2本(鷲尾兵士郎のペールエールと政のヴァイツェン)は主役。映画では出続けるので自分を強く主張する必要はないけど、脇役は物語に埋もれないために主張する必要がある」。セットリストを眺めながら「残る5本も相当、主張しているんでしょうね」。
④赤丹のレモンエール
「目隠しをして飲んだら10人に4人くらい『レモンサワー?』と言うと思うくらいレモンが立っていますね。レモンサワーとだまされるところがイカサマ師だ」と言って須藤さんが笑う。映画の赤丹は<武士を騙して大金を巻き上げ、投獄された札付きのイカサマ師>なのだ。
飲むと少し甘みがあるのもいい。「レモンの皮は香り付けで、果肉は絞って発酵させて使用しているなんて、本格的ですね。ここまでクラフトビールの王道を飲んできたので、急な変化球にだまされるけど、最初からこれを飲んだら『爽やかでおいしい』になるでしょうね」。
⑤二枚目のマスカットエール