業界別ERPのインフォア、生成AIやプロセスマイニングを発表--「業界クラウドを完成」
ERPベンダーのInforは、オランダ時間の10月22~23日に、首都アムステルダムで年次カンファレンス「Infor Velocity Summit Amsterdam」を開催した。基調講演には、最高経営責任者(CEO)のKevin Samuelson氏と最高技術責任者(CTO)のSoma Somasundaram氏がステージに立ち、同社が進める業界特化型の戦略を紹介するとともに、生成AI、プロセスマイニングなどの新機能を発表した。 DXプロジェクトの成功率は3割、Inforのアプローチ Inforは、2002年創業(当時の社名はAgilisys)で、食品・飲料、産業用品、ファッション、設備、産業機器製造、自動車製造など各業界別にERPシステムを展開する。その思想について、CTOのSomasundaram氏は次のように説明する。 「多くのソフトウェアが航空機メーカーから乳製品加工業者や政府と、さまざまな業界の異なる問題を1つのソフトウェアで解決しようとしている」「スイスのアーミーナイフは何でもできるように見えるが、産業レベルでは限界がある。特定業界の問題を解決するために必要なのは、深いレベルの機能だ」 それだけでなく、“マイクロバーティカル”(業界特化)として、さらに細かな業界別でも展開し、その種類は2000以上に及ぶという。これにより、顧客はカスタマイズをすることなくソフトウェアを実装できるとSomasundaram氏は述べる。 同社はクラウド戦略も進めてきた。CEOのSamuelson氏によると、450億ドルを投じて、他社とは異なるクラウド戦略を展開してきたとのこと。その結果が、クラウドERPの「Cloud Suite」だ。特徴はマルチテナントで、流通、製造、サービス(米国のみ)と, 3つのマルチテナントプラットフォームを構築。さらに、業界のベストプラクティスを事前に組み込むことで、価値を得られるようにしたという。 Somasundaram氏は、「その業界の全ての顧客が同じソフトウェアを動かしており、6カ月に一度の最新アップデートを受けられる」と述べる。2024年10月リリースでは、ディスクリート製造において2台目の装置を設置するためのサービスの調達など、400以上の機能を盛り込んだという。 もう一つの特徴は、Amazon Web Services(AWS)と「InforOS」だ。 AWSについてSomasundaram氏は、「クラウド戦略の早期段階でAWSに賭けた。われわれのデータレイクは『Amazon S3』上で動いており、『Amazon Glacier』『Amazon Textract』などの技術も活用している。AWSの機能を活用することで競争優位に立てる」と説明する。また、InforOSは、さまざまな機能を組み合わせるための統合エンジンとして機能し、共通のセキュリティモデル、データファブリック、APIを持つ。 このような土台があることによって、10月のリリースでは、持続可能性に関する各種指標のレポート作成機能を導入できたという。「ESG(環境、社会、統制)目標を設定し、データレイクで実際のデータを追跡したり、各種フレームワークを使ったレポートを作成するといったことが簡単にできる」(Samuelson氏) こうした機能に加えて、同社が重要な差別化とするのは、バリューマップだ。Samuelson氏は、「RFP(提案依頼書)や機能のことを考えるのではなく、購入する前にバリューマップを見て、どのようなバリューを目指すのか、実現可能かなどに同意している。これにより、投資対効果(ROI)のターゲットを共有して進めることができる」と説明する。 同社のソリューションでは、このように機能面、提供形態、サービスなどを通じて、「DXプロジェクトが期待通りに達成される割合は30%」(McKinsey調査)という問題を克服するという。