渡辺直美のヘアを手掛けるNEROが語る、ヘアスタイリストの仕事の流儀
ーその瞬発力のためには、相当の引き出しが必要になってきますよね。 1日24時間ありますが、考え事ができるのは起きている間だけです。休みの日だからといって、何も考えないことはありません。 僕の場合、ヘアスタイリストは仕事ではなく、好きなことをしている感覚です。なので、一日中ヘアのことや写真のことを考えていても、全然疲れないです。 思いついたアイディアをメモすることもありません。メモしなければならないようなアイディアは大したものではないと思っているので。世の中にはたくさんの情報が溢れていますが、ほとんど覚えていないのは、自分にとって大事じゃないからです。 だから、自分の頭の中に残っているアイディアで、常に勝負しています。
ーヘアスタイリストとしてのやりがいは、どこにあると感じますか。 撮影をしているときに感じるのは、写真を見たときにこの服を買いたいとか、おしゃれしたい、こういう髪型にしたいという感情を読者の方に与えられることですね。これって、すごい素敵なことですよ。 また美容師としての立場から言えば、髪を切ることって、その人の人生を大きく変える力があるなと思います。 一昔前だったら、女性が髪を短く切ったら、失恋したのなんて言われた時期がありましたよね。これは案外理にかなっていると思います。髪型によって印象が大きく変わるので、それに合わせて自分の内面だったりエネルギーが向く方向が大きく変わります。これをサポートできる仕事は美容師だけです。
好きなことをとことん突き詰める
ーこれまでのキャリアを振り返って、転機になった仕事はありますか。 特別この作品が、というのはありません。継続して仕事をして、自分の名前を広めていくことが大事だと思っています。この業界で、一夜にして有名になることはありませんから。 たとえば渡辺直美さんのヘアをやりたいと思ったとしても、ヘアスタイリストになって1年目の人が担当できるかと言われたら、誰でも無理だって考えると思います。それを目標に10年突き進めば、一度くらいチャンスは来るはずです。その一回のチャンスを僕は掴めたのだと考えています。 他の仕事も同じです。クライアントが見も知らぬ人を発掘してきて、仕事を与えたりはしないと思います。継続することで、初めて見える世界があると考えています。