渡辺直美のヘアを手掛けるNEROが語る、ヘアスタイリストの仕事の流儀
ヘアスタイリストとフォトグラファーの側面
ーヘアスタイルの着想はどこから得ますか。 強いて言えば、映画だと思います。音楽、映像、衣装、ヘアメイクがうまく組み合わさることで、近未来的な作品にもできるし、中世的な作品にも仕上げることができるわけですから、ある種の総合芸術だと思います。 僕の場合、映画を見ながら自分が担当だったらと考えて、スタジオでウィッグを触ってみたりします。
ーこれまでの作品の中で、思い入れのあるものを教えてください。 去年、『オフィスマガジン』の表紙を担当させてもらいましたが、あの現場は楽しかったですね。自分でモデルやスタイリスト、衣装や構成などトータルで作品づくりをすることができました。 表紙は渡辺直美さんで、バンダイのフィギュアをカチューシャに付けるというひねったアイディアも、今となってはよく考案できたと思います。
ーどのようなきっかけで『オフィスマガジン』の仕事は舞い込んできたのですか。 僕は基本的に撮影の企画の段階から、パーソナルプロジェクトでスタジオでカットや撮影をしています。 そこで撮った自分の作品をインスタグラムに継続的に投稿していたところ、編集者の目に留まりました。NEROに任せたら面白い表紙になるんじゃないかと期待してくれて、声をかけてくださったという流れです。 ー渡辺直美さんと仕事でのお付き合いは長いのですか。 直美さんがニューヨークに移住してきたときに、ヘアメイクさんを探していたみたいなんですね。それを相談した相手が、偶然にも僕の知人のネイリストだったんです。それで「NEROが良いよ」と伝えてくれたみたいで、それから一緒に仕事をしています。 実は僕がアシスタント時代に、一度直美さんの「PUNYUS(プニュズ)」というブランドの撮影でお会いしていました。だからニューヨークで顔を合わせるのは2度目でしたが、当然僕のことなんて覚えていないと思っていたら、直美さんが、前に会ったことありますよね?みたいな感じで言ってくれて。そこで経緯をお伝えしたところ、すっかり意気投合したんですよね。 ー渡辺直美さんに限らず、現場ではモデルさんの好みなどを事前に調べたりするのですか。 事前にモデルさんの好みを調べることはありません。僕が担当するのは、ファッションショーやブランドの撮影になるので、そのブランドの洋服であったり、全体のテイストに合わせてモデルさんに合う髪型を探していきます。 常に意識しているのは「瞬発力」です。その場その場の一瞬のひらめきやセンスが大事だと思っています。時間をかければ誰でも作りたい作品は作れますから。撮影の現場では常に不測の事態が起こるので、それにいかに対応できるかが重要なスキルになってくると思います。