再び主役の座へ?増加する「中国人観光客」と過去最高の「インバウンド」の行く末
訪日外国人(インバウンド)が絶好調である。客数・消費額とも過去最高更新ペースで増加しているが、しばらく存在感が薄れていた常連さんがいた。中国客である。コロナ前、インバウンドの主役は中国客だった。ただならぬ迫力で周囲を圧倒し、爆買いという言葉も生んだ彼らだが、コロナを契機に主役の座を韓国客に譲り、気配を消していた。ところが、2023年半ば以降、中国客が着々とプレゼンスを増している。中国人観光客は今後増えるのか。増えた場合の課題はないのか。現状と課題、先行きを分析した。 【詳細な図や写真】図表2:訪日外国人旅行消費額推移(出典:国土交通省観光庁「訪日外国人消費動向調査」「インバウンド消費動向調査」より筆者作成)
消費額は堂々の首位、存在感を増す中国客
訪日外国人(インバウンド)が過去最高更新ペースで増加する中、韓国客や台湾客に比べて伸び悩んでいた中国客が着々と回復している(図表1)。 インバウンドは客数・消費額の両面で絶好調である。2024年1~9月のインバウンドは、コロナ前の2019年1~9月比10.1%増の2688万人。2024年通年でも過去最高の3188万人(2019年)を更新する見込みである。2024年1~9月のインバウンド消費も5.84兆円と、過去最高だった2023年通年の5.31兆円をすでに超えている(図表2)。 インバウンド消費をけん引しているのが、中国客である。客数では韓国客と拮抗(きっこう)しているが、韓国客、台湾客などほかのアジア客に比べて1人当たり支出が多いことから、消費額では堂々の首位である(図表3)。
なぜ中国客は気配を消していた?
コロナ前、中国客は客数・消費額の両面でインバウンドの主役だった。だが、コロナ禍で状況は激変した。2022年10月、日本が遅ればせながらコロナ水際対策を緩和した際、韓国客を筆頭に多くのインバウンドが続々と訪日を開始したのに、中国客の存在感は、当初、ほぼゼロだったのである。 2022年10月のインバウンドを見ると、先陣を切って戻ってきたのが韓国客(2019年10月比38%減の12.3万人)。これに米国客(同65%減の5.3万人)、香港客(同80%減の3.6万人)が続いた。中国客は同97%減の2.1万人とまったくもって元気がなく、その後も長らく韓国客、台湾客の後塵(こうじん)を拝していた。 中国客はなぜ長らく気配を消していたのだろうか。そして、なぜ復活し始めたのだろうか。