再び主役の座へ?増加する「中国人観光客」と過去最高の「インバウンド」の行く末
国慶節では日本が「1番人気」
とはいうものの、中国は約14億人の人口を有する経済大国であり、海外旅行に行きたい・行ける層の厚さは日本の比ではない。しかも、日本の人気は大変高い。 もう終わってしまったが、中国では10月1日から国慶節(建国記念日)で7連休だった。春節(旧正月)は帰省する人が多いが、国慶節は旅行派が多い。中国の旅行予約サイト最大手・携程集団(トリップドットコムグループ)によると、国慶節の海外旅行の目的地はタイ、韓国、マレーシアなどを抑えて日本が首位だった。 訪日旅行にはビザ取得が必要にもかかわらず人気が高いのは、(1)見どころが多く清潔感があり食事のレベルも高いこと、(2)距離が近い、(3)円安によるお得感、(4)他国に比べて相対的にあまり物価が上昇していないことがあるが、2024年に入って日中を結ぶ国際線が本格的に回復してきたことも大きい。
訪日旅行を後押しする国際線の復活
国際線運航便数(旅客定期便)は、コロナ禍でいったん大きく落ち込んだが、2022年冬期スケジュール以降、力強く回復している。卵が先か鶏が先かよく分からないが、飛行機が飛べばインバウンドが増え、インバウンド需要があればそれにこたえようと復便・増便の動きが出る。 2024年夏期当初の運航便数は5388便/週と、コロナ前の95%の水準まで戻した。ただ、回復の度合いには濃淡があり、韓国がコロナ前比で56%増と大きく伸びているのに対して、海外渡航に及び腰だった中国、ウクライナ侵攻の影響でロシア上空を飛べず航空運賃が高騰し、所要時間も大幅に増加している欧州は、まだコロナ前に戻っていない(図表4)。 航空便の回復が客数の増加につながっている好例が、韓国客である。韓国路線は大韓航空やアシアナ航空のようなフル・サービス・キャリア(FSC。高価格だがサービス・座席の水準が高い航空会社)だけでなく、済州航空、ジンエアーなどの格安航空会社(LCC)も多数就航している。LCCを利用すれば、ソウル-成田を1万円台半ばで往復できるチケットもある(2024年10月下旬の価格)。老いも若きも続々と訪日するというものである。 ただ、コロナ前比マイナスの日中路線に関しても、中国国際航空、中国東方航空などのFSCに加え、一時期ほとんど復便していなかった深圳航空、上海吉祥航空などのLCCも戻りつつある。解禁当初は成田-北京の航空券代が往復約30万円というのも目にしたが、今は往復3万円台のチケットもある。30万円では出張族か富裕層しか来ないだろうが、3万円台に突入すれば客層も広がっていく。