再び主役の座へ?増加する「中国人観光客」と過去最高の「インバウンド」の行く末
ついに客数でも逆転?韓国客に肉薄する中国客
ちなみに絶好調のインバウンドだが、回復度合いは国・地域によって異なる。2024年1~9月の訪日客数をコロナ前の2019年1~9月と比較すると、国・地域別で最も多い韓国の31%増(647万人)に対して、中国客は同29%減(525万人)と、タイ(同13%減)、ロシア(同24%減)と並ぶ数少ないマイナス組である。 ご参考までに補足すると、タイとロシアの不振は、タイはビザ不要の中国旅行人気が高まっていること、ロシアはウクライナ侵攻後の各国の制裁の影響が大きい。 中国客に話を戻すと、コロナ前比ではマイナスだが、2023年1~9月比では3.3倍と、2024年に入ってにわかに勢いづいている。2024年7月、8月には韓国客を上回っており、主役交代局面に入りつつあることを感じさせる。
コロナを境に中国客が消えた理由
コロナ前、中国客は押しも押されもせぬインバウンドの主役だった。 コロナ前の2019年の中国客は959万人。2位の韓国客の558万人を大きく引き離して首位だった。同年のインバウンド総数が3188万人だったことから、インバウンドの約3人に1人が中国客だったことになる。消費額での存在感はさらに大きく、総額の約4割を中国客が占めていた。会話の音量の大きさ、豪快な買い物の様子、大型バスで乗り付けて大人数で移動する圧倒的な存在感もあいまって、インバウンドといえば中国客という時期があったのである。 ところが、コロナを境に中国客は伸び悩んだ。 理由は多々ある。(1)水際対策本格緩和当初、日中両国に規制が残っていたこと、(2)訪日するにはビザ取得の必要性があること、(3)2023年8月まで日本への団体旅行が禁止されていたこと、などだが、コロナを契機に中国人のマインドが大きく変わったこと、中国経済の先行き不透明感もある。 中国不動産大手の経営不安はたびたび再燃して住宅価格が下落しており、株式市場の動きはさえず、若年層の失業率も高い。中国人の消費マインドは冷え込んでいる。 コロナ禍を経て国際線の航空運賃が高騰したことも大きかった。中国客を獲得すべく、タイやマレーシア、シンガポールなどが中国客の短期滞在ビザを免除していることも、日本には相対的に不利に働いている。 さらに、コロナ禍を機に訪日旅行の強敵も現れた。中国国内旅行である。 中国のゼロコロナ政策の解除後、大盛況となったのが中国の国内旅行である。海外に行くのは何かとハードルが高いが、旅行には行きたい。中国では中国客誘致に注力している地域も多く、SNS等で盛んにプロモーションが行われ、観光名所を紹介している。なんと、中国にもこんなに見どころがあったのか。コロナ後、中国人の国内旅行は大いに盛り上がった。 旅行で大事なのは足である。中国当局が国際線より国内線の輸送能力回復を優先させたことも中国人の国内旅行熱を高めた。