再び主役の座へ?増加する「中国人観光客」と過去最高の「インバウンド」の行く末
中国客が本格回復間近で、顕著になる課題
訪日意欲の高さ、中国路線の回復状況から見て、政治情勢に左右される面はあるものの、中国客は今後も回復基調をたどるだろう。2024年に入り中国客が韓国客を上回る月もある。いずれは首位に返り咲くと見られる。 中国客は旅行消費額の多さから見て期待できる存在であることは確かだが、課題もある。オーバーツーリズムの加速である。 オーバーツーリズムとは、人気観光地で混雑、渋滞、ごみのポイ捨て、地域住民が公共交通機関に乗れないなどの問題が起き、あまりの混雑に観光客もうんざりして満足度を低下させることを指す。インバウンドが多く訪れる地域、たとえば京都では、地域住民が路線バスに乗れず、日常生活に支障を来しているという事態も見られる。 背景には、人手不足と有名観光地への観光客集中がある。宿泊・飲食業、運輸業など観光関連業界ではコロナ禍で人材が大量離職して、その後も戻りが悪い。日本人の旅行需要だけで手一杯だったところにインバウンドが急増して、オーバーツーリズムが顕在化している。 さらに間の悪いことに、建築費や用地取得費の上昇によりホテル新設を手控える動きもある。ここに中国客が本格復活したらどうなるのか。 今でもオーバーツーリズムに悩む地域は少なくない。中国客復活はプラスの面もあるが、受け入れる余力があるのかという課題を我々に突き付けている。
執筆:東レ経営研究所 チーフアナリスト 永井 知美